退去時のクリーニング費用は、賃貸契約の終了に伴って多くの入居者が直面する問題です。特に、契約書に「特約」として記載されている場合、その費用の負担について疑問や不安を感じることもあります。国土交通省のガイドラインでは、このようなクリーニング費用に関する特約の有効性について明確な基準を設けていますが、実際のところ、その適用は複雑な場合が多く、入居者とオーナー間でのトラブルに発展することも少なくありません。
退去時クリーニング費用の特約って無効じゃないの?払わないことも可能?
原状回復のガイドラインでは退去時クリーニング代は入居者負担になっていますが、特約に納得して契約している場合は、払う必要が出てくる可能性が高いです。
本記事では、退去時クリーニング費用特約の有効性、相場、そして負担を回避する方法について解説し、入居者が賢く対処するための情報を提供します。
- 退去時クリーニング費用の特約について無効なのか
- 払わない方法や相場・いつ払うのかタイミングも紹介
宅建士:(大阪)第118737号・建築CAD2級・基本情報技術者
シュース 健人
しゅーす けんと
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退去時クリーニング費用の特約は無効?
国土交通省のガイドラインでは無効
国土交通省のガイドラインでは、賃貸住宅における原状回復の費用負担に関して詳細な規定があります。これによると、原状回復とは「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」を指し、その費用は賃借人の負担とされています。一方で、通常の使用による損耗等の修繕費用は賃料に含まれるとされ、賃貸人の負担となっています。これに基づくと、賃借人が通常の使用による清掃を行っている場合に、追加のクリーニング費用を負担する必要は原則としてありません。
賃貸契約時に特約に署名している場合は有効
しかし、契約の自由の原則に基づき、契約書にクリーニング費用の特約が含まれ、賃借人がこれに署名している場合、特約が有効になる可能性もあります。特約が有効とされるためには、賃貸借契約書、重要事項説明書、賃貸住宅紛争防止条例に基づく説明書において、通常の部屋の使用によって汚れたり壊れたりする箇所や内容、退去時に専門業者がクリーニングする箇所や内容、入居者の退去費用の負担内容や範囲を明確にするなどの説明がなされている必要があります。
また、クリーニング特約が無効となった裁判例もあり、専門業者に清掃を委託する必要がない場合にまで、入居者にクリーニング費用を負担させる趣旨を含んでいたり、清掃の有無や程度に関わらず一定のクリーニング費用を負担させることが明確でない場合などは、特約が無効とされる可能性があります。
退去時のクリーニング費用に関する特約の有効性は、契約の内容や特約の明確性、そして国土交通省のガイドラインの規定に依存します。特約が存在し、その内容が明確で合理的な場合には有効となる可能性がありますが、通常の使用による清掃を行っている場合に追加費用を請求されることはガイドラインの精神に反するため、無効とされる可能性が高いです。賃貸契約を結ぶ際には、このような特約について事前に確認し、納得のいく形で契約を締結することが重要です。
退去時クリーニング費用の相場や注意点
クリーニング費用の相場
退去時のハウスクリーニング費用は、部屋のタイプや地域、清掃の範囲によって大きく変動します。一般的には、ワンルームや1Kの場合、約30,000円からが相場とされています。しかし、契約によっては特約として定められた金額を支払う必要があり、その場合は契約書に記載された金額を基準にします。相場より高額であっても、契約書に署名している以上はその金額を支払う義務が生じます。
原状回復費用は別途請求の対象
原状回復費用とは、入居者が使用により発生した損耗を修復するための費用です。一般的には、故意や過失による損耗に対して入居者が費用を負担します。ただし、賃貸契約に特約としてクリーニング費用の支払いが合意されている場合、その特約に基づいて退去時に費用が請求されることもあります。政府のガイドラインでは、原状回復の範囲について詳細な規定があり、トラブルを避けるためにもこれらの内容を理解しておくことが重要です。
トラブル回避の対策
退去時のクリーニング費用をめぐるトラブルを避けるためには、以下の対策が効果的です。まず、居住中に日常的な清掃を怠らず、特に水回りなどの汚れやすい箇所を定期的に掃除しておくことが重要です。また、契約書に記載された特約を事前に確認し、クリーニング費用に関する条項がある場合は、その内容をよく理解しておく必要があります。
これらの情報を参考にして、退去時のクリーニングに関して適切な準備と対策を行うことで、スムーズな退去プロセスを実現しましょう。
退去時クリーニング費用を払わない・無効にする方法
①お部屋探しのタイミングで特約を確認
退去時のクリーニング費用については、原則として物件のオーナーが負担するものですが、賃貸契約時に入居者が費用を負担するという特約が含まれている場合もあります。契約をする際には、ハウスクリーニングや清掃に関する特約の有無を確認し、不必要な費用を避けるために、特約の内容について詳しく理解することが重要です。
②入居時払いに変更を交渉する
契約書の中にクリーニング費用の記載がある場合でも、その支払い条件について交渉の余地があります。一律で決まっているクリーニング費用について、入居時に前払いすることで、退去時の負担をなくす交渉ができるかもしれません。しかし、契約書に署名している以上、記載されている金額の支払い義務は発生しますので、契約書をよく読み、必要ならば事前に交渉を行うことが大切です。
③原状回復費用はかからないように過ごす
退去時にかかる費用の多くは、入居者の故意や過失によるものです。日常の生活で、エアコンの試運転や水漏れ、ガラスの破損などの異常に気づいた場合は、直ちに管理会社や大家に連絡をすることが重要です。また、自然災害などで設備に損傷が生じた場合も、速やかに報告を行い、責任の所在を明確にすることで、無用な費用の請求を避けることができます。
④UR賃貸に住むと不要
UR賃貸などの公的な賃貸物件の場合、退去時のクリーニング費用を入居者が負担することは少なく、多くの場合、原状回復費用も含めてオーナー負担となるケースが多いです。そのため、退去時の費用を気にする場合は、このような公的な賃貸物件を選択することも一つの方法です。
トラブルを避けるためには、契約時に内容をしっかり確認し、入居中は異常に気づいたらすぐに報告し、退去時には精算内容をよく確認することが重要です。また、特約が無効になった事例もあるため、特約の内容には特に注意が必要です。
結論:退去時クリーニング費用特約を無効にするには
退去時のクリーニング費用特約をめぐる問題は、入居者だけでなくオーナーにとっても重要な問題です。特約が無効となる場合や、相場を超える高額な費用が請求されるケースもあり得ます。しかし、契約書の内容を事前に確認し、入居時の部屋の状態をしっかりと記録しておくこと、そして適切な交渉を行うことで、不当な負担を避けることが可能です。また、UR賃貸のように退去時のクリーニング費用が原則不要な住宅を選ぶことも一つの手段となります。この記事を通じて、退去時のクリーニング費用に関する理解を深め、無駄な出費を防ぐための知識を身につけていただければ幸いです。