
※画像出典:毎日新聞
2023年01月17日(火)。性犯罪に関する刑法改正について法務相の諮問機関「法制審議会」の刑事法部会は昨年10月に示した「試案」の改訂版を提示しました。強制性交等罪・強制わいせつ罪の「構成要件」など数カ所の文言を修正、具体的な変更点と問題点は以下の通りです。
目次
▶強制性交等罪・強制わいせつ罪の「構成要件」文言修正!
▶撮影罪の対象範囲は?
▶性交同意年齢の引き上げは年齢差プラス5歳以上で一律に処罰対象に!
▶【再掲】推進派の思想的な背景について!
▶【再掲】人権重視の諸姉諸兄は反対の声を!
▶管理人後記(意見送り先)!
■強制性交要件、試案を修正「不同意表明が困難」に―法制審
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023011700471&g=pol
時事ドットコム 2023年01月17日 12時37分
法制審議会(法相の諮問機関)の刑事法部会が17日に開かれ、法務省側が刑法の性犯罪規定の見直しに向けた試案を一部修正して提示した。強制性交等罪や強制わいせつ罪などの構成要件について、昨年10月の試案では被害者を「拒絶困難」にさせた場合としていたが、「同意しない意思を形成し、表明し、もしくは全うすることが困難な状態」にさせた場合に改めた。
■性犯罪規定見直し試案「拒絶困難」成立要件の文言変更 法務省
https://mainichi.jp/articles/20230116/k00/00m/040/102000c
毎日新聞 2023/1/17 12:24(最終更新 1/17 21:30)
また、性交同意年齢の引き上げに関する文言も一部変更した。試案は、13歳以上16歳未満と性的行為をした5歳以上年上を処罰するとしつつ、「13歳以上16歳未満の対処能力が不十分であることに乗じた場合」という要件を付けていた。今回の改定版では、加害者が不当に「被害者に対処能力があった」と主張して処罰を免れることがないよう、この要件を削除した。
17日の部会では、改定版に対し、被害者側から「不同意の性交が処罰対象と分かりやすく示された」などと賛意が示されたという。部会は今後、改定版を基に法改正の要綱案を取りまとめ、2月中の法相への答申を目指すとみられる。【山本将克】
強制性交等罪・強制わいせつ罪の「構成要件」文言修正!
昨年10月の試案では、暴行・脅迫、心身に障害、アルコール又は薬物を接種、睡眠その他の意識不明確な状態、拒絶の暇を与えない、恐怖・驚愕、虐待、地位の利用の8項目の行為によって「拒絶の意思の形成・表明・実現を困難な状態」にさせた上で性交渉を行った場合に処罰する内容でした。
しかし、刑事法部会での議論で「被害者に抵抗する義務を課しているように読める」「拒絶困難でなければ性交渉は許されるという誤ったメッセージになる」と「拒絶困難」の文言を用いることに異論もありました。
こうした経緯を踏まえて、改訂版ではこの8項目を維持した上で「同意しない意思の形成・表明・全うを困難な状態にさせる」「そうした状態に乗じて性的行為をした場合に処罰」に置き換えました。
被害者側は不同意の性交は処罰対象と分り易く示されたと賛意を示したそうです。一方で「同意しない」に文言に変更したことで事実上「不同意性交罪」の一歩手前まで改悪されました。性交渉の原則違法化は目前です。
要注目は「アルコール又は薬物を摂取させる」です。後者は論外として夫婦やカップルに限らず「お互いに酒の勢いで性交渉」は一般論として普通にあり得ます。また、性犯罪・性暴力は基本的に「密室」で行われる行為です。これを罰する刑罰法規に「その他これに類する行為」などの曖昧な条文はあり得ません。完全に「明確性の原則(憲法31条)」に違反しています。
撮影罪の対象範囲は?
これは前回の記事でお伝えした通りです。現時点で「撮影罪」の構成要件は不明です。例えば更衣室やトイレなどを意図的に盗撮した場合に限定すれば処罰化は概賛成です。しかし、正当な撮影行為まで規制されかねない点は要注意です。
捜査当局は簡単にスマートフォン等を調べられるようになるので構成要件を相当絞り込まなければ現場のさじ加減でそのまま逮捕になりかねません。また「プライバシー権」の兼ね合いは懸念されます。スマートフォン等の普及率を考えれば非常に危険です。
また「提供」まで処罰対象になっているのは見過ごせません。提供を規制すれば将来的に「所持罪」まで進みかねません。これはリベンジポルノも同様です。仮にそうなった場合の危険度は児童ポルノの比ではありません。非常に危険です。
更に「創作物(フィクション)」への影響は気になります。適正AVは言うに及ばず「インディーズメーカー」や「同人」の「盗撮モノ」まで潰されかねません。推進派の顔触れや盗撮は現時点で既に処罰対象なのに新たな法律を作る意味を考えれば十分にあり得る展開です。
性交同意年齢の引き上げは年齢差プラス5歳以上で一律に処罰対象に!
性交同意年齢は「13歳以上16歳未満」に引き上げます。同年代同士の自由な意思決定による性交渉を対象外にする為に「年齢差プラス5歳以上」の「例外規定」を設けました。また、昨年10月の試案では「当該13歳以上16歳未満の者」に対して「対処能力不十分であることに乗じて性交渉等をした場合」に適用される内容でした。
しかし、試案をまとめた法制審議会(の一部)はこの部分について「13歳~15歳にとって5歳差は対等な関係ではない」「その年齢差では自由な意思決定はできない」と指摘しました。これを受けて、当該13歳以上16歳未満の者に関しては「年齢差プラス5歳以上の時点で一律に処罰対象」に変更しました。
性犯罪に関する刑法改正で最大の問題点はこれです。
日本は既に、
・成人年齢の引き下げ
・結婚可能年齢の引き上げ
・児童福祉法
・淫行条例(青少年保護育成条例)
によって「婚前交渉禁止」に極めて近い状態の異常な国です。現行法を踏まえずに「結論ありき」で議論を進めているのは論外です。また、
・保護法益
・基本的人権の享有主体
・例外規定による内心の自由の侵害
・刑事責任能力との整合性
・16歳の客観的な根拠
・5歳差の客観的な根拠
を踏まえて総合的に判断すれば性交同意年齢の引き上げは間違いなく「基本的人権の不当な制限」で「憲法違反」です。特に日本版「ロミオとジュリエット条項」で「内心の自由」にまで踏み込んだ点は由々しき事態です。グルーミングの処罰化を含めて「16歳」に異常に固執している点は思想的な認知バイアスを感じます。
【再掲】推進派の思想的な背景について!
性交同意年齢の引き上げや不同意性交罪は、児童ポルノ禁止法の制定~所持罪の導入、旧統一教会の純潔キャンペーン、第4波フェミニズムの台頭、2010年以降の左派主導のキャンセル・カルチャー、国連・子どもの権利委員会の勧告などの外圧、AV新法、推進派の思想的な背景はほぼ同じで地続きの問題です。
【再掲】人権重視の諸姉諸兄は反対の声を!
法務省の「性犯罪に関する刑事法検討会」では比較的まともに議論していただけに「刑事法部会」に移って一気にトチ狂った印象です。法務全般を司る官庁なのに機能不全と言えるレベルです。
個々人の「基本的人権」を大幅に制限する以上、相当の立法事実を要求されるのは当然です。しかし、推進派の歪んだ道徳観や感情論で「社会法益保護法」の方向で議論されている感は否めません。基本的人権を「年齢」で制限するのは極めて危険な発想です。
これは「基本的人権」「立憲主義」「法治主義」の危機です。立憲主義・法治主義を重視する諸姉諸兄は綺麗事抜きで本気で「反対」の声を上げて欲しいです。特に表現の自由界隈やAV新法で表現規制に関心を持った方達は絶対に妥協はNGです。ここで引けば終りです。完全に詰みます。
■関連記事:【法務省崩壊】性犯罪に関する刑法改正!法制審議会「試案」示す!暴行・脅迫要件を見直し!公訴時効は「5年」延長!性交同意年齢は「16歳」に引き上げ!問題山積で反対必須の悪法に!
http://constitutionalism.jp/blog-entry-4210.html
■関連記事:【稀代の悪法】性交渉の原則違法化!不同意性交罪に現実味?日本学術会議「国際的な人権基準を反映した法改正を」!同意の有無を中核に置く刑法改正に向けて提言!
http://constitutionalism.jp/blog-entry-4000.html
管理人後記(意見送り先)!
現時点で評価できるのは「公訴時効の延長」です。それ以外はほぼ修正必須です。試案の段階でここまでの「悪法」は過去前例はありません。常識的に考えれば憲法や罪刑法定主義(明確性の原則)に違反するのは明白です。
■法務省:ご意見・ご提案
https://www.moj.go.jp/mail.html
刑事法部会は改定版を基に法改正の要綱案を取りまとめて2月中の法務相への答申を目指します。与野党共に「純潔カルト」に汚染されている状況なのでまずは「法務省」にガンガン意見を送って軌道修正しなければ手遅れになってしまいます。




