
※画像出典:日本経済新聞
岸田政権は通常国会に提出予定の「防衛産業を支援する法案」について「防衛装備品の性能や数量」などに関する「情報」の「漏洩防止対策」を盛り込む方針です。企業などで働く民間人を対象に防衛省訓令上の「秘密」を洩らした場合の刑事罰を新設します。
■防衛装備、秘密漏えいに罰則 産業支援法案の概要判明
https://nordot.app/989451003977416704
共同通信 2023/01/21
政府が防衛産業を支援するため、通常国会に提出する生産基盤強化法案の概要が21日、分かった。企業がサプライチェーン(供給網)やサイバー攻撃対策を強化する経費を支援する枠組みを新設。一方で、防衛装備品に関わる情報管理を徹底するため、性能などの秘密を漏えいした場合には刑事罰を設ける方向だ。「アメとムチ」を併用することになり、防衛産業の活性化につながるかどうかは見通せない。
■防衛装備の「秘密」漏えい、企業に刑事罰 政府、規定を拡大方針
https://mainichi.jp/articles/20230118/k00/00m/010/254000c
毎日新聞 2023/1/18 19:56 (最終更新 1/19 07:15)
政府は、防衛装備品の製造などに関わる企業を財政支援する一方で、装備品情報を外部に漏らした企業関係者に対する刑事罰の規定を拡大する方針を固めた。現状、民間人が刑事罰の対象になるのは特定秘密保護法に基づく「特定秘密」など特に重要な情報の漏えいに限られるが、今後は比較的重要度が低い防衛省訓令上の「秘密」の一部についても刑事罰を科せるようにする。防衛企業に情報管理の徹底を促すのが狙いで、関連法案を通常国会に提出する。
産業支援法案の概要判明!
2023年01月21日(土)。岸田政権は防衛産業を支援する「生産基盤強化法案」を通常国会に提出、概要によれば「防衛装備品の性能や数量」などに関する「情報」の「漏洩防止策」を盛り込む方針です。企業などで働く「民間人」を対象に防衛省訓令上の「秘密」を洩らした場合の刑事罰を新設します。
これまでは特定秘密保護法に基く「特定秘密」や米国に供与された「特別防衛秘密」の漏洩に「10年以下の懲役」などを刑事罰を科していました。いずれも詳細は原則非公表です。
それ以外の情報に関しては防衛企業の役員や従業員による漏洩の場合、契約解除や違約金の支払いなど民事上のペナルティーを科すだけでした。今後は比較的重要度の低い防衛省訓令上の「秘密」の一部を「装備品等秘密」に位置付けて「知り得る立場の民間人」による「故意の漏洩」に刑事罰を設けます。
装備品の性能、操作方法、調達する数量に関する情報などを「装備品等秘密」に定義する方向です。量刑は特定秘密保護法に比べて軽く「1年以下の懲役」などを目安に検討しています。尚、サイバー攻撃による情報漏洩は対象外にします。
国内企業の競争力を高めて販路拡大を支える支援策!
また、法案には「国内企業の競争力を高めて販路拡大を支える支援策」を明記します。更に、サプライチェーン(供給網)の強靭化、輸出の為に装備品の仕様・性能を変更する際に費用を国で負担する為の基金の創設、資金の貸し付けについて日本政策金融公庫で配慮、事業継続困難な企業の製造施設を国で保有可能にする制度などを盛り込みます。
■海自1佐を懲戒免職「特定秘密」初の漏えい―OBに周辺情勢説明、書類送検
https://www.jiji.com/jc/article?k=2022122600426&g=soc
時事ドットコム 2022年12月26日 16時59分
特定秘密保護法で定められた「特定秘密」を元上司の海上自衛隊OBに漏らしたとして、防衛省は26日、海自の元情報業務群司令で、現在は幹部学校に所属する井上高志・1等海佐(54)を懲戒免職とした。特定秘密の漏えい発覚は、2014年の同法施行後初めて。自衛隊の警察に当たる警務隊が同日、同法違反容疑などで書類送検した。
海上自衛隊の幹部自衛官を特定秘密保護法違反・自衛隊法違反で書類送検!
機密情報の漏洩を巡っては、昨年12月に特定秘密保護法に基く「特定秘密」をOBに漏らした疑いで海上自衛隊の幹部自衛官を懲戒処分にした事件は記憶に新しい所です。
海上自衛隊の幹部学校に勤務する1等海佐(54歳)は数年前、既に退職していた元自衛艦隊司令官の元海将(OB)に安全保障に関する説明を行った際に、特定秘密に該当する日本周囲の情勢に関する情報、自衛隊法で機密に指定された部隊運用や訓練の情報を漏らしたそうです。
防衛省は1等海佐を12月26日(月)付で懲戒免職処分、自衛隊内部の捜査機関「警務隊」は同氏を特定秘密保護法違反と自衛隊法違反の疑いで横浜地方検察庁に書類送検しました。
また、これに関与した疑いで、自衛艦隊司令部の情報主任幕僚(当時)を停職5日、既に退職していた自衛艦隊司令官(当時)を減給(自主返納)、同じく既に退職していた海上幕僚長(当時)を指揮監督の義務違反で戒告の懲戒処分を行っています。
防衛省関係の特定秘密は「392件」です。特定秘密保護法に基く特定秘密の漏洩は2014年の法律施行後初のことです。
管理人後記!
特定秘密保護法では高度な情報保全の必要な防衛などに関する情報を「特定秘密」に指定、漏洩した場合は「10年以下の懲役」又は情状によって「10年以下の懲役及び1000万円以下の罰金」に処します。また、これに関与した場合は「5年以下の懲役」又は情状によって「5年以下の懲役及び500万円以下の罰金」に処されます。
岸田政権は生産基盤強化法案を通常国会に提出する予定です。ポイントは「比較的重要度の低い防衛省訓令上の秘密の一部を『装備品等秘密』に位置付ける」の部分です。これは特定秘密保護法の事実上の拡大です。
機密情報の管理の厳重化は一定の必要性を感じます。しかし、企業や民間人に「自衛隊レベルの情報管理」を求めるのは相当な危険性を孕んでいます。例えば「防衛相」であればコントロールは可能です。
一方で、民間企業の場合は「知らず知らずの内に『秘密』に触れるケース」だってあり得ます。また、前述の海上自衛隊の幹部自衛官による情報漏洩は防衛省への「通報」で発覚しました。ある種の相互監視化を招くことは大いに懸念されます。




