
※画像出典:時事ドットコム
2022年10月24日(月)。性犯罪に関する刑法改正について法務相の諮問機関「法制審議会」の刑事法部会は試案を示しました。最大の焦点は「暴行・脅迫要件の見直し」で他に「公訴時効の延長」「撮影罪の新設」「グルーミングの処罰化」などを盛り込んでいます。
懸念された「不同意性交罪」は現時点では見送る方針です。一方で「性交同意年齢」を「16歳」に引き上げるのは看過できない大問題です。基本的人権を制限する悪法では所謂「共謀罪」やかつての「児童買春・児童ポルノ禁止法の改正」を超える危険度です。
以下問題点や対案などに関してまとめました。長文注意です。尚、本件に関しては媒体によって若干異なるニュアンスで報道されていて現時点では中身を正確に把握できていません。したがって、定期的に本記事もしくは別の記事で追記・加筆・修正します。
目次
▶不同意性交罪はペンディングに?
▶公訴時効の延長について!
▶撮影罪の新設について!
▶グルーミングの処罰化について!
▶暴行・脅迫要件の見直しについて!
▶性交同意年齢の引き上げについて!
▶推進派の思想的な背景について!
▶人権重視の諸姉諸兄は反対の声を!
■「性交同意年齢」5歳以上差なら16歳に…法務省案、性犯罪時効の見直しも言及
https://www.yomiuri.co.jp/national/20221025-OYT1T50106/
読売新聞オンライン 2022/10/25 07:35
刑法の性犯罪規定の見直しを検討している法制審議会(法相の諮問機関)の刑事法部会が24日に開かれ、法務省が、強制性交罪の成立に必要な要件などを改正する試案を示した。現在の「暴行・脅迫要件」に加え、幅広い行為や状況を列挙し、被害者側の意見を一定程度反映させた。時効の延長なども提案した。
■「不同意性交罪」見送り 刑法改正の試案、暴行・脅迫要件を見直しへ
https://www.asahi.com/articles/ASQBS3QTGQBGUTIL028.html
朝日新聞デジタル 田内康介 2022年10月24日 13時07分
性犯罪をめぐる刑法の規定の見直しを検討してきた法制審議会(法相の諮問機関)の部会で24日、議論を踏まえた法改正の試案が示された。最大の焦点だった強制性交罪は、該当しうる行為として従来の暴行・脅迫だけでなく8項目を例示し、被害者が声を出して抵抗できない場合も含めて「拒絶困難」な状態になった場合に成立すると改める内容になった。
不同意性交罪はペンディングに?
以前、当ブログで取り上げた「不同意性交罪」は現時点では見送られる方針です。これは「性交渉を原則違法化」する悪法です。しかし、推進派は積極的にロビイングを行っていて今後の展開次第でゴリ押しされる可能性はあります。要注意です。
公訴時効の延長について!
精神的なショックなどで申告をしにくい特性を踏まえて、強制性交罪は現在の10年⇒15年に、強制わいせつ罪は現在の7年⇒12年にするなど各罪で「5年延長」しました。また、公訴時効の延長に関しては特に若者の被害申告の遅れに配慮して「18歳未満」だった場合は「18歳に達するまでの期間」を「公訴時効に加算」する仕組みを導入します。
多少の懸念はあるものの現実的な見直しです。尚、推進派は公訴時効の「撤廃」を目指しています。公訴時効を撤廃すれば「後付で犯罪認定し放題」になるので非常に危険です。仮に「不同意性交罪」とセットで運用すれば危険度は桁違いに高まります。
撮影罪の新設について!
過去に地方自治体で似たような条例はありました。滋賀県の迷惑行為等防止条例改正では盗撮行為の規制場所拡充や盗撮行為で映像を記録した場合の罰則を強化、盗撮目的で写真機等を「人に向ける行為」「設置する行為」を厳罰化しました。これに対して「どうやって『盗撮目的』を判断するのか?」で物議を醸しています。
東京都の迷惑防止条例改正では「『盗撮行為』を『規制できる場所』を拡大」しました。電車や銭湯など「公共の場所」に加えて「住居内」や「ホテルの居室」などの「私的空間」及び「学校」「会社の事務室」などの「不特定又は多数の人の出入りがある場所」を取り締りの対象しています。
撮影罪を導入について一定の理解はできます。しかし、捜査当局は簡単にスマートフォン等を調べられるようになるので「構成要件」を相当絞り込まなければ現場のさじ加減でそのまま逮捕になりかねません。また「プライバシー権」との兼ね合いは懸念されます。スマートフォン等の普及率を考えれば非常に危険です。
グルーミングの処罰化について!
グルーミングは被害者に性的虐待に同意するように強要して逮捕される危険を減らすために手懐けることを意味します。主に幼い子どもに対して用いられるだけでなく10代の若者や大人まで同様の危険に晒されるケースもあります。
簡単に言えば「性犯罪・性暴力を目的に親しくなること」を指します。こうした行為を処罰することに反対はしません。しかし「何をもって『手懐ける』を定義するのか?」「どうやってそれを客観的に証明するのか?」は大いに疑問です。
所謂「声掛け禁止」の改悪版になる可能性は高いです。小学生・中学生程度であれば処罰化は理解できます。しかし、高校生~大人まで対象になれば恣意的に運用されかねません。すべては「対象年齢」次第です。後付でグルーミング認定されないように防止策(附帯決議など)は必須です。
暴行・脅迫要件の見直しについて!
弁護士のくまえもン氏(@cure_kumaemon)のツイートとこれに対する「反応」を見れば一目瞭然です。要注目は「アルコール又は薬物を摂取させること」です。後者は論外として夫婦やカップルに限らず「お互いに酒の勢いで性交渉」は一般論として普通にあり得ます。
刑法177条、178条改正試案が出てる。広範かつ曖昧な文言も多く濫用リスクが高そうな気がするが、このまま通るんだろうか。 pic.twitter.com/yFJMOA6zgR
— くまえもン🐨 (@cure_kumaemon) October 26, 2022
また、性犯罪・性暴力は基本的に「密室」で行われる行為です。これを罰する刑罰法規に「その他これに類する行為」などの曖昧な条文はあり得ません。完全に「明確性の原則(憲法31条)」に違反しています。現行の「強制性交等罪」をそれ以上に曖昧にしたのは論外です。
性交同意年齢の引き上げについて!
本試案で最大の問題点はこれです。現行で13歳の性交同意年齢を「16歳」に引き上げます。一方で、低年齢同士の性交渉を除外する為に「13歳以上16歳未満」を対象にした性交渉は「年の差プラス5歳以上の者」を処罰対象にします。
低年齢同士の性交渉に配慮したのは一定の評価です。しかし、
・成人年齢の引き下げ
・結婚可能年齢の引き上げ
・保護年齢や刑事責任能力との整合性
・淫行条例(青少年保護育成条例)
を踏まえれば、性交同意年齢を16歳に引き上げることに「必要性・合理性・相当性はあるのか?」は甚だ疑問です。筋論で言えば本来は性交同意年齢の引き下げ議論だってあって然るべきです。
また、この例外規定を文面通りに解釈すれば、
・15歳と20歳はセーフ
・15歳と21歳はアウト
になります。後者のケースで懲役5年を課すことに「必要性・合理性・相当性はあるのか?」は大いに疑問です。以上の点で現時点で性交同意年齢を引き上げるのは論外です。
推進派の思想的な背景について!
性交同意年齢の引き上げや不同意性交罪は、児童ポルノ禁止法の制定~所持罪の導入、旧統一教会の純潔キャンペーン、第4波フェミニズムの台頭、2010年以降の左派主導のキャンセル・カルチャー、国連・子どもの権利委員会の勧告などの外圧、AV新法、推進派の思想的な背景はほぼ同じで地続きの問題です。
■関連記事:【稀代の悪法】性交渉の原則違法化!不同意性交罪に現実味?日本学術会議「国際的な人権基準を反映した法改正を」!同意の有無を中核に置く刑法改正に向けて提言!
http://constitutionalism.jp/blog-entry-4000.html
人権重視の諸姉諸兄は反対の声を!
法務省の「性犯罪に関する刑事法検討会」では比較的まともに議論していただけに「刑事法部会」に移って一気にトチ狂った印象です。法務全般を司る官庁なのに機能不全と言えるレベルです。
個々人の「基本的人権」を大幅に制限する以上、相当の立法事実を要求されるのは当然です。しかし、推進派の歪んだ道徳観や感情論で「社会法益保護法」の方向で議論されている感は否めません。基本的人権を「年齢」で制限するのは極めて危険な発想です。
これは「基本的人権」「立憲主義」「法治主義」の危機です。立憲主義・法治主義を重視する諸姉諸兄は綺麗事抜きで本気で「反対」の声を上げて欲しいです。特に表現の自由界隈やAV新法で表現規制に関心を持った方達は絶対に妥協はNGです。ここで引けば終りです。完全に詰みます。





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