
岸田文雄氏の当選で幕を閉じた自民党の総裁選挙。投開票直前に高市早苗氏は「憲法12条の改正」に言及、私権制限の明確化を主張しました。自民党の本丸は「緊急事態条項」など「基本的人権の制限」です。新型コロナウイルスの感染拡大で私権制限に賛成する人は過半数を超えました。改めて憲法改正「発議」の阻止について真剣に考えるべきです。
■3氏、改憲「未来志向で」高市氏、私権制限の明確化主張―自民総裁選
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021092600222&g=pol
時事ドットコム 2021年09月26日 21時43分
自民党総裁選の4候補は26日、憲法改正や教育政策などをテーマに、4日目のオンライン討論会に臨んだ。河野太郎規制改革担当相(58)、岸田文雄前政調会長(64)、野田聖子幹事長代行(61)の3氏は、9条への自衛隊明記など4項目の党改憲案の実現に「未来志向」で取り組む考えを表明。高市早苗前総務相(60)は4項目に加え、私権制限の明確化を主張した。
■公共の福祉=国民の権利 対 国民の権利。公益及び公の秩序=国家 対 国民の権利。高市早苗議員の改憲案では国家が自由に人権を制限できるようになります。極めて危険です。
https://togetter.com/li/1780078
Togetter 2021年9月26日
公共の福祉=国民の権利 対 国民の権利。公益及び公の秩序=国家 対 国民の権利。高市早苗議員の改憲案では国家が自由に人権を制限できるようになります。極めて危険です。
【自民党総裁選】国民の声に応える政策討論会④「憲法改正、少子化・人口減少対策、地方創生、スポーツ文化振興、 教育・人への投資」(2021.9.26)!
国家権力の都合で基本的人権を制限!
2021年09月26日(日)。高市早苗氏は自民党のオンライン政策討論会で「憲法改正」について「国民は常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負う」と定めた「憲法12条」に触れた上で「『公共の福祉』を『公益及び公共の秩序』にして(緊急時に私権を)一定程度制限できる形をはっきりさせたい」と提案しました。私権制限の明確化です。
高市早苗氏は公の場で「自民党の改憲草案(2012年版)」の復活を宣言しました。立憲主義や天賦人権論を全否定するトンデモ改憲草案です。中華人民共和国憲法に酷似した内容で当時批判を浴びました。改憲派の橋下徹氏まで「悪夢」と批判したレベルです。
公益及び公の秩序の問題点!
自民党の公開した「日本国憲法改正草案 Q&A(増補版)」の「『公共の福祉』を『公益及び公の秩序』に変えたのは、なぜですか?」には以下のように書かれています。
(「公共の福祉」を「公益及び公の秩序」に改めた理由)
従来の「公共の福祉」という表現は、その意味が曖昧で、分かりにくいものです。そのため、学説上は「公共の福祉は、人権相互の衝突の場合に限って、その権利行使を制約するものであって、個々の人権を超えた公益による直接的な権利制約を正当化するものではない」などという解釈が主張されています。しかし『街の美観』や『性道徳の維持』などを人権相互の衝突という点だけで説明するのは困難です。
今回の改正では、このように意味が曖昧である「公共の福祉」という文言を「公益及び公の秩序」と改正することにより、その曖昧さの解消を図るとともに憲法によって保障される基本的人権の制約は、人権相互の衝突の場合に限られるものではないことを明らかにしたものです。
公共の福祉は「個々人の人権相互の調整原理」で「国民の権利VS国民の権利」です。これに対して「公益及び公の秩序」は「国家権力VS国民の権利」で180度変わっています。更に、怖いのは解釈次第で「道徳」「美徳」「多数派の意見や利益」まで含まれかねない点です。
高村正彦副総裁(当時)はこれについて「現行憲法の『公共の福祉』を置き換えただけ」「わかりやすく言い換えたもので意味は変わらない」とあからさまなデマで国民をミスリードしました。起草委員の1人として参加した片山さつき氏(当時)もまた同種の発言をしています。
タカ派?極右?高市早苗氏の危険な思想!
一部の右派や保守層に絶大な支持を得ている高市早苗氏、20年近く続けている「コラム」を読めば同氏の国家観や憲法観は他の自民党議員と比較して別次元の危さを孕んでいます。
高市早苗氏は生粋の憲法改正論者です。国会議員に当選して以降まったくブレていません。憲法9条の改正で「戦争の放棄」などの条項を削除して自衛隊を「国防軍」に改称、敵基地攻撃能力の保有や軍事費の増額を主張しています。
また、日本の国旗への損壊等の行為は、外国の国旗への損壊等に対する行為と同じく「処罰とすべき」と述べました。かつての大日本帝国のような軍事国家を目指しています。
現代の教育に関しては「歴史教科書のとんでもない記述」と題したコラムで「自虐史観に満ちた教科書が多く、日本の歴史の影の部分を殊更に強調して、日本が誇るべき歴史上の人物の功績などは省いてあるという代物です」「歴史教科書は、採択現場を仕切る某教職員団体の影響から、自虐的で左翼思想に近い内容にする程、よく売れるとされてきました」と言及、日本の教科書は自虐史観だと批判しています。
更に、南京大虐殺の人数の水増しを問題視、従軍慰安婦を戦後の造語と一蹴するなど驚くべき内容です。支持者の熱狂ぶりはドナルド・トランプ氏の登場時を彷彿させます。仮に日本の総理大臣になった場合、諸外国とこれまで以上の摩擦は避けられず外交面で大きな爆弾を抱える事になります。
表現規制への影響は?
MANGA議連会長で高市早苗選対本部長の古屋圭司氏は、表現規制の懸念について「しかし高市候補は『ゲーム・アニメを戦略的に支援する』と表明しており、これには自由な表現が必要不可欠です」「表現の自由の重要性は高市候補としっかり共有して参ります」と回答しました。
しかし、こうした「言葉」は憲法の条文を「公益及び公の秩序」に書き換えた時点で完全に吹っ飛びます。特に「コンテンツ文化は対象外で基本的人権の制限を」なんて状況を許せば洒落にならないので表現規制反対クラスタは警戒レベルを上げるべきです。
現行憲法の「公共の福祉」でさえ拡大解釈されている現状を踏まえればその危険性は明白です。近年、横行している過激派フェミニストの「ふしだら規制」や宗教右翼の「青少年健全育成」など公序良俗や道徳(性道徳)に基く権利制限はすべて正当化できます。
改めて憲法改正「発議」の阻止を!
前述の発言を受けて尚、高市早苗氏の国家観や憲法観に共鳴した政治家は100人以上に上りました。総裁選挙では敗れたもののこの事実は見過せません。自民党の本丸は「緊急事態条項」など「基本的人権の制限」です。
新型コロナウイルスの感染拡大で「私権制限」に賛成する人は過半数を超えました。改憲勢力の3分の2議席阻止は必須です。国民投票まで進めば高確率で改正は避けられません。改めて憲法改正「発議」の阻止について真剣に考える時です。




