
菅政権はインターネット上で「誹謗中傷」をした投稿者を特定し易くする為に「新たな裁判手続きの創設」を柱にした「プロバイダー責任制限法」の改正案を閣議決定。国会に提出しました。情報開示に掛る時間や費用の負担を軽減して迅速な被害者救済に繋げます。通常国会で成立すれば来年末までに施行される見通しです。
■ネットの中傷投稿者、特定容易に 被害救済、改正法案を閣議決定
https://this.kiji.is/737825857726382080?c=39550187727945729
共同通信 2021/2/26 09:16(JST) 2/26 09:33(JST) updated
政府は26日、インターネット上で匿名の誹謗中傷を受けた被害者が投稿者を特定しやすくするための関連法改正案を閣議決定した。新たな裁判手続きの創設が柱。開示にかかる時間や費用の負担を軽減し、より迅速な被害者救済につなげる。
■プロバイダ責任制限法、改正案が閣議決定 投稿者IPアドレスなどの開示手続きを簡略化
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2102/26/news097.html
ITmedia 谷井将人 2021年02月26日 11時45分 公開
これまで、誹謗中傷に当たる内容を書き込んだ投稿者のIPアドレスや個人情報を取得するには、Webサイトの運営者や接続事業者に仮処分申請や訴訟などを起こす必要があった。改正後は、被害者の申し立てを基に裁判所が情報開示を判断することで、被害者の負担軽減を図るという。
投稿者の情報開示を巡っては、総務省も2020年8月に省令を改正。プロバイダ責任制限法に基づく情報開示の項目に電話番号を追加した。
被害者の負担軽減は高評価!
2021年2月26日(金)。菅政権はインターネット上で「誹謗中傷」をした投稿者を特定し易くする為に「新たな裁判手続きの創設」を柱にした「プロバイダー責任制限法」の改正案を閣議決定。国会に提出しました。通常国会で成立すれば来年末までに施行される見通しです。
現行のプロバイダー責任制限法は、誹謗中傷に当たる内容を書き込んだ投稿者のIPアドレスや個人情報を取得する為にはWebサイトの運営者や接続事業者を相手にそれぞれ仮処分申請や訴訟を起すなど主に「2回」の手続を行わなければなりません。情報開示には1年以上の時間を要します。
新たな裁判手続きはこうした手続を簡略化。訴訟を起さずに被害者の申し立てに基づき裁判所は情報開示の適否を判断します。また、投稿者の情報を消さないように「情報消去の禁止」をSNSなどの事業者に命じます。申し立て~開示命令決定までは数カ月程度に短縮します。原則的に手続は「1回」で済むので被害者の負担は大幅に軽減されます。
事の発端は?
2020年5月23日(土)。フジテレビで放送していた恋愛リアリティー番組「テラスハウス」に出演していたプロレスラーの木村花氏(当時22歳)は、番組内の言動など巡るSNS上での誹謗中傷を苦に自殺、これを切っ掛けに厳罰化を求める声は強まりました。総務省は同年8月に省令を改正、プロバイダー責任制限法に基づく情報開示の項目に「電話番号」を追加しています。
投稿者の異議申し立ては?
投稿内容の事実性や公共・公益性のある場合は違法にしない事など情報開示の「要件」は従来と変わりません。裁判所の決定に不満のある被害者や事業者は異議訴訟を起こせます。閣議決定の現段階では方向性は概評価できます。しかし「投稿者」の異議を認めないのは大問題です。
誹謗中傷の定義は?
まず「誹謗中傷」の言葉自体に法律上の明確な定義はありません。現時点で「名誉毀損」「侮辱」「信用毀損」「業務妨害」は既に刑事罰の対象です。親告罪なので被害者本人で刑事告訴をしなければ刑事事件にならないものの告訴をすれば「刑事罰」を課す事は可能です。
また「人格権」として「プライバシー権」「肖像権」「平穏生活権」「氏名権」などは裁判で救済の対象になっています。過去の犯罪歴などを含めてプライバシー権で保護されます。これらに関して法的措置を取る場合は「民事責任」までで刑事罰の対象になっていません。
インターネット上の誹謗中傷に関係するのは主に「名誉毀損」及び「侮辱」です。更に「批判の自由」については非常に気になる所です。これは民主主義を支える重要なファクターです。武蔵野美術大学教授の志田陽子氏は「『誹謗中傷』と『批判』の違いとは何か?」を美術批評の視点で論じています。一読をオススメします。
政府・与野党に意見を!
結論を述べてしまえば「プロバイダー責任制限法」の改正案は表現規制的に問題山積で政府・与野党に意見は必須です。インターネット上の誹謗中傷を巡って厳罰化を求める声は多くあります。右派/保守/愛国界隈は賛否両論。左派/リベラル/反差別界隈は「誹謗中傷」を独自に解釈していて危険な流れになっています。
(1)投稿者の異議申し立て制度
(2)スラップ訴訟の防止
(3)表現の自由/言論の自由の保護
少なくとも以上の3点は条文化しなければなりません。このままでは将来的に批判を誹謗中傷に摩り替えて封殺する「スラップ訴訟」は間違いなく多発します。こうした状況で得をするのは被害を受けた人ではありません。富裕層、大企業、利権団体など豊富な資金力や組織力を持っている人達です。




