
菅政権は「新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)」に基く「緊急事態宣言」の再発出を決定しました。対象は「東京」「埼玉」「千葉」「神奈川」の1都3県で機関は2月7日(日)までの1カ月間です。一方で、今回は飲食店を狙い撃ちにする形で実施したので効果の程は未知数です。また「一律給付金」を実施しないなど前回に比べて補償は不十分です。
■1都3県に緊急事態宣言 菅首相「1カ月後に事態改善」―8日から来月7日まで
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021010700898&g=pol
時事ドットコム 2021年01月07日 21時09分
政府は7日夕、新型コロナウイルス感染症対策本部(本部長・菅義偉首相)を首相官邸で開き、東京都と埼玉、千葉、神奈川3県を対象にした緊急事態宣言を決定した。発令期間は8日から2月7日まで。感染リスクが高いとされる飲食店などへの営業時間短縮の要請が対策の柱。首相は記者会見で「1カ月後には必ず事態を改善させる」と決意を示した。
■持続化給付金など、15日の申請期限延長せず 政府方針
https://www.asahi.com/articles/ASP166VYWP16ULFA02M.html
朝日新聞デジタル 津阪直樹 2021年1月6日 20時57分
新型コロナウイルスで売り上げが落ち込んだ中小事業者らを支援する「持続化給付金」と「家賃支援給付金」について、政府は6日、申請の受け付けを15日に予定通り締め切る方針を固めた。野党が政府の緊急事態宣言に合わせて締め切りを延長するよう求めていたが、ほかの支援策で補えると判断したとみられる。
■休業の「命令」違反業者に50万円以下の過料 特措法の政府原案が判明
https://mainichi.jp/articles/20210106/k00/00m/010/214000c
毎日新聞 2021年1月6日 20時26分(最終更新1月6日22時09分)
新型コロナウイルス対策の強化に向け、政府・与党が2月上旬の成立を目指している新型インフルエンザ等対策特別措置法改正案の政府原案が判明した。緊急事態宣言下の休業を巡り、都道府県知事が現行の「指示」よりも法的拘束力のある「命令」を事業者に出せるように改正し、従わない場合は50万円以下の過料とする。8日の政府・与野党連絡協議会で提示する方針だ。
2021年1月7日(木)。菅政権は「新型コロナウイルス対策本部」で正式に「緊急事態宣言」の再発出を決定しました。対象は「東京」「埼玉」「千葉」「神奈川」の1都3県です。他に大阪府や愛知県も要請を検討しています。
期間は1月8日(金)~2月7日(日)までの1カ月間です。西村康稔経済再生担当相は緊急事態宣言の解除基準に関して「1週間当たりの感染者数が10万人当たりで25人を下回る事になっている」「これを東京都に当てはめると1日当たり約500人の水準になる」と認識を示しました。状況次第で解除時期は変化します。
菅義偉首相は同日夕方に緊急記者会見を行って国民に緊急事態宣言を決定した経緯について説明しました。新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)に基いて対象の自治体に以下の措置を実施します。
・飲食店は20時(夜8時)までに営業時間短縮
・酒類の提供は19時まで
・営業時間短縮店舗に1日6万円1カ月で最大180万円の協力金
・スポーツ観戦やコンサートなどの入場者数を5000人までに制限
・20時以降の不要不急の外出/移動自粛要請の徹底
・観光支援のGoToトラベルは一時停止の期間を延長
・テレワーク推進で出勤者数を7割減
今回の緊急事態宣言は飲食店をピンポイントで狙い撃ちにしました。スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの対応についてはコチラのリンク先を参照。飲食店以外は緩くコロナ慣れした人の流れを抑えられるかは未知数です。
教育機関等は対象外!
先日1月4日(月)に都立高校で初のクラスター発生。生徒ら45人の集団感染を確認しました。しかし、今回は「小中学校」「高校」「大学」「幼稚園」「保育園」への休校・休園は要請していません。家庭内感染の対策、感染者の隔離体制の充実、クラスター(集団感染)の発生防止は同時に行わなければなりません。従って「学校」「映画館」「劇場」を対象外にした事は完全に失策です。
中小事業者の支援は打ち切る方針!
中小事業者を支援する「持続化給付金」及び「家賃支援給付金」について菅政権は当初の予定通り1月15日(金)で申請受付を締め切る方針です。朝日新聞の記事によれば、政府・与党は「他の支援策で補える」と判断した模様。立憲民主党など野党の要望は完全に無視して打ち切りを決定しました。緊急事態宣言の再発出で延長や拡充を期待する声は多かったものの一蹴した形です。
特措法に罰則規定!
菅政権は特措法の改正案に罰則規定を盛り込む方針を固めました。休業命令に従わなかった飲食店等の事業者を対象に「50万円以下の罰金」を科す内容です。改正案は2月上旬の成立を目指して与野党で協議を進めます。
一律給付金は無しで補償は不十分!
本来であれば補償を拡充して休業命令に従った際の損失を補填するのは当然です。緊急事態宣言の発出に合せて罰則規定と補償廃止を提案した事は衝撃的です。特に「持続化給付金」の打ち切りは中傷零細企業にとっては死刑宣告に等しいです。
更に、菅政権は「一律給付金」の実施を否定しました。持続化給付金と家賃支援給付金は申請受付を打ち切る。雇用調整助成金の特例延長は2月まで。医療機関への減収補填はゼロ。今回は飲食店を対象にピンポイントの協力金程度に留まる見通しです。正気の沙汰ではありません。
国会説明は見送りに!
菅義偉首相は新型コロナウイルス対策本部で緊急事態宣言の決定について説明を行いました。一方で、昨年の緊急事態宣言発出の際に安倍晋三前首相は「国会」に出席して説明を行いました。立憲民主党など野党は菅義偉首相の出席を求めたものの同氏は欠席の意向を伝えています。最低限の記者会見だけで説明を拒否する姿勢には批判殺到しています。
緊急事態宣言の発出まで!
2021年1月2日(土)。東京都の感染者数は過去最多の1日1300人を突破、医療機関に入院している患者数は2000人を突破。使用可能な病床使用率は100%を超えました。これを受けて東京都の小池百合子都知事は日本政府に「緊急事態宣言の発出を要請」する意向を固めました。都単独の対応では不可能と認めた形です。
同日午後、首都圏の新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、東京都の小池知事、埼玉県の大野元裕知事、千葉県の森田健作知事、神奈川県の黒岩祐治知事は、永田町の合同庁舎内で西村康稔経済再生担当相と面会しました。この中で1都3県の知事は、正式に「新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく『緊急事態宣言』の発出を速やかに検討するように要請」しました。
2020年12月31日(木)。東京都の発表した新規感染者数は「1337人」に上りました。新規感染者の内、感染経路を特定できたのは「408人」で、全体の7割に匹敵する「928人」は感染経路不明で調査対象になっています。
また、感染者数の急増で医療機関の受け入れ体制は圧迫、自宅療養は過去最多の「3174人」に増加しました。更に、自宅療養とは別に「入院・療養等調整中」の患者数は「2341人」に増加、入院したくてもできない患者は入院中の患者を超えました。同年同月の時点で入院中の患者数は2594人なので自宅療養は非常に深刻な数字です。
2020年12月30日(水)。東京都の小池百合子都知事は「緊急記者会見」を行いました。新型コロナウイルスの感染拡大による医療提供体制について「危機的な状況になっている」として若者を中心に外出を控えるように要請しました。また「この年末年始は、感染拡大、食い止められるか否かの分水嶺であります」と述べて年末年始や御正月の外出自粛を求めています。
小池百合子都知事は緊急事態宣言の要請について「急速に増加している」「医療提供体制はひっ迫している」「それは危機的状況に直面している」と言葉を強めた上で「年末年始のここで感染を抑えなければ緊急事態宣言の発出を国に要請せざるを得なくなる」と言及しました。同年同月の時点で東京都の稼働可能な病床数はほぼゼロ状態。厚生労働省や自治体の統計データによれば90%以上の病床を使用中です。
2020年12月30日(水)。西村康稔経済再生担当相は自身のTwitterに動画を投稿。国民に対して年末年始の外出自粛に協力を求めた上で「緊急事態宣言の再発令も視野に入っている」と警鐘を鳴らしました。担当相自身でこのような動画を投稿した事は市中感染の深刻化を示しています。





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