
重要法案「種苗法改正案」は審議不足のままで可決・成立しました。国に登録された種や苗木の海外流出を防止する名目です。一方で「自家増殖(自家栽培)」の規制によるコスト増を懸念した国内農家(特に小規模)は反対の声を上げました。立憲民主党や日本共産党はこれを理由に抵抗したものの数の力でゴリ押しされています。
■改正種苗法成立 海外流出防止へ 21年4月施行
https://www.agrinews.co.jp/p52575.html
日本農業新聞 2020年12月03日
優良品種の海外流出の防止を目的とした改正種苗法が2日、参院本会議で可決、成立した。 品種の開発者が栽培地域を国内や特定の都道府県などに限定できるようにする改正は、2021年4月に施行。 品種登録した品種(登録品種)の自家増殖を許諾制にする改正は22年4月に施行する。
■改正種苗法について知っておくべき10のこと
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00210/120400002/
日経ビジネス電子版 藤中潤 2020年12月4日
国内で開発されたブランド果実などの種や苗木の海外への流出を防ぐ仕組みを強化した改正種苗法が12月2日の参院本会議で可決、成立した。一部の規定を除き、2021年4月に施行される。政府は、通常国会での成立を目指していたが、新型コロナウイルスへの対応などで十分な審議時間が取れなかったこともあり継続審議に。一部からは法改正への懸念の声も出ていた。そもそも種苗法とはどういう法律なのか、どういった改正が行われるのか、知っておくべき10項目をまとめた。
■法律を作っても効果ないと政府自ら認める ではなぜ急ぐ、種苗法改正案の採決
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/415996
京都新聞 2020年11月17日 12:30
11月12日の衆院農水委員会。農産物の国産品種の海外流出防止を目的とした種苗法改正案について、政府は「(流出を)止めることは難しい」と答弁した。法律を作っても効果はない、と自ら認めた。なぜこんなことになるのか。
■拙速に進む種苗法改正 広がる農家と市民の不安
https://news.yahoo.co.jp/byline/matsudairanaoya/20201201-00210441/
Yahoo!ニュース 個人 松平尚也 2020/12/1(火) 12:02
種苗法改正における問題は、登録品種の種苗の「知的財産権」が強化される一方で、農民の「自家増殖の権利」が制限される点にある。「自家増殖」とは農業者が収穫物の一部を次期作付け用に種苗として使用する、いわゆる「自家採種」のことを指す。
国会の議論やメディアの報道では、改正案の内容を巡り議論が紛糾している様子がみてとれる。主要な論点は、種苗の登録品種の自家増殖(採種)への許諾制導入による農家の負担増の有無と海外流出防止の実効性だ。
改正種苗法は2021年4月施行!
2020年11月17日(火)。衆議院農林水産委員会。種苗法改正案は賛成多数で可決しました。日本で開発された新品種の海外流出を防止する為に開発者は農林水産省に出願、登録する際に栽培地域や輸出先を指定できます。種や苗木を「知的財産」として保護する仕組みを強化します。
また、収穫物の種子を採取して翌シーズンの生産に使う「自家増殖(自家栽培)」に制限を設けました。種苗を第三者に渡るリスクを抑える狙いです。尚、自家増殖の制限で農業経営を圧迫しないように種苗を適正価格で安定的に供給される施策の実行を政府に求める附帯決議を採択しています。
2020年11月19日(木)。衆議院本会議。種苗法改正案は立憲民主党と日本共産党を除いた与野党の賛成多数で可決、衆議院を通過しました。
2020年12月1日(火)。参議院農林水産委員会。種苗法改正案は賛成多数で可決しました。与党側は「日本の優良品種ぼ海外流出を防ぐ為に必要だ」と主張しています。これに対して、立憲民主党や日本共産党など野党側は「国内農家の自家増殖(自家栽培)の阻害」を理由に反対を表明しています。
2020年12月2日(水)。参議院本会議。種苗法改正案は「自民党」「公明党」「日本維新の会」「国民民主党」などの賛成多数で可決・成立しました。国に登録された種や苗木を海外に無断で持ち出す事を全面的に禁止。許諾を受けていない指定地域以外で栽培したり無断で海外に持ち出したりした場合は生産・販売の差し止めを請求できます。また、違反した場合は「10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金」を科します。
小規模農家に危機感?
極めて重要な法案なのに審議時間は異例の短期間。過去の重要法案に比べて半分以下の短時間審議です。農産物の国産品種の海外流出について政府・与党は「流出を止める事は難しい」と答弁するなど急ピッチで進めてしまった感は否めません。
元々「種苗法」は国内の優良な種子を守る為の「種子法」を2018年に廃止して置き換えたものです。一方で、外資系企業に対する規制は緩く日本の農業を脅かす懸念は根強くありました。また、今回の法改正によって「自家栽培(自家増殖)」は制限されました。新品種の種や苗木を増やす際に登録品種の育成者の許諾は必須になります。コスト増を懸念する「国内農家(特に小規模農家)」は反対の声を上げています。




