
※画像出典:東洋経済オンライン
刑法の性犯罪規定について専門家で構成される「日本学術会議」の3つの分科会は「国際的な人権基準」を反映した法改正を求める提言をまとめました。所謂「不同意性交罪(不同意性交等罪)」に踏み込んだ点は要注意です。これは「性交渉の原則違法化」を意味します。結論ありきのマスコミの論調を含めて非常に危険な流れです。
※誤字脱字修正、一部表現を修正、法改正推進派の主張に関して追記、推進派の主張に対する反論と制度上の問題点について追記しました。
■提言「「同意の有無」を中核に置く刑法改正に向けて―性暴力に対する国際人権基準の反映―」のポイント
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/kohyo-24-t298-5-abstract.html
日本学術会議 令和2年(2020年) 9月29日
■「同意ない性交、犯罪に」学術会議、刑法改正へ提言
https://this.kiji.is/698437565082092641?c=39546741839462401
共同通信 2020/11/9 16:41 (JST) 11/9 19:18 (JST) updated
刑法の性犯罪規定について、専門家で構成される日本学術会議の三つの分科会は、現行法の問題点を指摘し、国際的な人権基準を反映した法改正を求める提言をまとめた。法改正を巡っては、法務省の検討会で10日から個別の規定について具体的な議論が始まる。「各国と同様、同意のない性交自体を犯罪化する規定に変えるべきだ」とした提言は影響を与えそうだ。
暴行・脅迫要件を問題視!
刑法の性犯罪規定について専門家で構成される「日本学術会議」の3つの分科会は「国際的な人権基準」を反映した法改正を求める提言をまとめました。法改正を巡っては、法務省の「性犯罪に関する刑事法検討会」で個別の規定について具体的な議論を行っています。
特に「暴行・脅迫要件」を問題視。同意のない性交は被害者に深刻な影響を与えるのにこの要件を満たさなければ加害者を処罰できない現状について「被害者保護の観点で不十分」と指摘しました。また、2018年に法改正したスウェーデンなどを例に各国の性犯罪の成立要件について「同意の有無」を重視した法制度に移行している事を説明しています。
前述の分科会のひとつで法学委員会ジェンダー法分科会の三成美保委員長は「性暴力は顔見知りの間で力関係の差によって生じやすく、被害女性は凍り付いて抵抗できないケースが多い『いかなる性行為も同意の上でなければ罰せられる』という国際人権基準を日本の刑法にも反映し、刑事司法全体にジェンダー平等の視点を取り入れるべきだ」と述べています。
現行法の問題点を指摘した上で「各国と同様に同意のない性交自体を犯罪化する規定に変えるべきだ」と提言しました。刑法の性犯罪規定は2017年に改正、厳罰化されたものの相次ぐ「無罪判決」を受けて被害者団体を中心に更なる厳罰化を求めています。所謂「不同意性交罪(不同意性交等罪)」に言及した点は要注意です。これは今後の議論に大きな影響を与えかねません。
ジェンダー法学者の暴挙!
問題の提言は「ジェンダー学」に関連する分科会で作成しました。性嫌悪のジェンダー法学者やそれに同調した学者達の歪んだ思想を反映したものである事を前提に見ればある意味で納得の内容です。
端的に言えばこれは「日本学術会議の権威を濫用した一部分科会の暴挙」です。まともな刑事法の専門家であればまずこんな提言はしません。刑法の改正について「疑わしきは被告人の利益に」を真っ向否定した「日本学術会議」の在り方は問われるべきです。
マスコミの偏向報道に要注意!
日本学術会議の提言は今年9月末に公表されたものです。所謂「任命拒否問題」で注目の集まる時期ではあったものの1カ月以上経ったこのタイミングで報じた共同通信の狙いは気になる所です。
近年、大手メディアは挙って人権活動家や被害者団体の一方的な主張を垂れ流して厳罰化を煽っています。特に「朝日新聞」「毎日新聞」「東京新聞」はラディカル・フェミニズムの御用メディアと化しています。NHKは性犯罪・性暴力について度々特集を組むなど非常に危険な流れになっています。
性交渉の原則違法化に反対の声を!
2017年の改正刑法の付則では「2020年を目処に施策の在り方を検討する」と定めました。法務省は今年6月に「性犯罪に関する刑事法検討会」を発足、既に複数回の議論を行っています。第9回会議は12月8日(火)に開催予定です。
数ある悪法の中で危険度は「測定不能」です。被害者の内心の不同意に依存した「不同意性交罪(不同意性交等罪)」は実務上不可能で「推定無罪の原則」を否定する悪法です。論理的には「性交渉の原則違法化」を意味します。まずは「反対」を前提に法務省や与野党に幅広く意見して頂ければ幸いです。
■法改正推進論者の主張
(1)不同意性交罪(不同意性交等罪)の新設
(2)暴行・脅迫要件の撤廃
(3)性的同意年齢の引き上げ
(4)推定無罪の原則の否定(撤廃)
(5)性犯罪者にGPS機器の装着義務(仮釈放中限定?)
(1)及び(2)について、被害者の内心の不同意に依存した「不同意性交罪」及び「暴行・脅迫要件の撤廃」は主に3つの問題を孕んでいます。
まず「冤罪」の危険性を限りなく高める事です。性交渉時は同意していたのに後々の関係悪化で「あの時は同意していなかった」と嘘の被害を訴えたケースは既にあります。現行法ではこうした問題を比較的抑止できます。しかし、被害者の内心の不同意に依存した不同意性交罪では不可能に近い状況になります。
次に「犯罪の立証」を困難にする事です。現行法では「暴行又は脅迫」「心神喪失」「抗拒不能」など構成要件は比較的明確なのでこれを立証できれば罪に問えます。しかし、被害者の内心の不同意を構成要件にすれば「誰から見ても不同意だった事」を「客観的に証明」しなければなりません。犯罪の立証を困難にするので「被害届の不受理」や「不起訴」は更に増えます。
逆に、警察や検察の「被害者の同意なく性交渉をした」という主張や被害者の「同意していなかった」という供述だけで立証を可能にすれば、実質的に被疑者(被告人)若しくは弁護士に立証責任を転換する事を意味します。これは憲法上許されません。
(3)について、犯罪者にとって元々「同意年齢」は関係ないので少なくとも犯罪抑止の面で見れば不必要な改正です。また、学生同士の恋愛や年の差カップルの自己決定権を侵害しない制度設計はほぼ不可能です。個々人の恋愛感情やそれに基くコミュニケーションの自由は最大限に保障されなければなりません。少なくとも別枠で議論するべきです。
(4)について、前述のように警察や検察の「被害者の同意なく性交渉をした」という主張や被害者の「同意していなかった」という供述だけで立証を可能にすれば、実質的に被疑者(被告人)若しくは弁護士に立証責任を転換する事を意味します。
日本共産党は2019年の参議院選挙でこの「立証責任の転換」を公約にしています。これは刑事裁判の基本原則を根底から覆すレベルの暴挙です。
(5)について、人権上大きな問題を孕んでいる事は間違いありません。しかし「仮釈放中」に「限定」であれば概支持できる内容です。
所謂「不同意性交罪(不同意性交等罪)」を導入した国で性犯罪を劇的に減らせたエビデンスは存在しません。性犯罪・性暴力の対策強化を目的にするのであれば構成要件の改正ではなく「検挙率」及び「起訴率」を上げて被害者の受け入れ態勢を強化すべきです。以上の点を踏まえて現実的な対策は以下の通りです。
■性犯罪・性暴力の現実的な対策は?
(1)暴行・脅迫要件の緩和
(2)準強制性交等罪の見直し強化
(3)証拠保全手段の充実
(4)相談事業の拡充&警察職員の増員
(5)推定無罪の原則の厳守を明文化
(6)人質司法の解消
(7)虚偽申告の厳罰化
推進派の大半は「道徳」「倫理」「常識」「人間関係」などを理由に不同意性交等罪ありきで法改正を主張しています。これに対して、反対(慎重)派は刑罰法規の原理原則を理由に反論しています。刑法を改正するのであれば正しいのは後者です。根本的に噛み合っていません。この認識のズレは議論を更に困難なものにしています。
被害者の内心の不同意を構成要件にした不同意性交罪(不同意性交等罪)は稀代の悪法と言わざるを得ません。性犯罪・性暴力に関する法律は既に事実上の「推定有罪」で運用されています。所謂「人質司法」の罷り通る日本では殊更危険です。





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