
原爆投下直後に降った「黒い雨」を浴びたのに被爆者健康手帳などの交付申請を却下された住民達による所謂「黒い雨訴訟」について、原告全員に被爆者健康手帳の交付を命じた一審判決を不服として「国」「広島県」「広島市」は広島地方裁判所に控訴しました。被害者救済を重点に置いた県と市は消極的だったものの控訴に踏み切った模様。背後にあるのは安倍政権の強い意向で非常に残酷な展開になっています。
■黒い雨訴訟、広島市と広島県が控訴 国の要請受け入れ
https://www.asahi.com/articles/ASN8D3PMBN84PITB01N.html
朝日新聞デジタル 戦後75年特集 2020年8月12日 12時46分
広島への原爆投下後に降った「黒い雨」を国の援護対象地域外で浴びた住民ら84人全員を被爆者援護法上の「被爆者」と認め、被爆者健康手帳の交付を命じた広島地裁判決について、国と被告の広島県、広島市が12日、控訴した。市と県に手帳交付事務を委託し、訴訟に被告ではなく補助的立場で参加する国の控訴方針を受け入れた。一方、国はこの日、援護対象となる地域の拡大を視野に再度の検証を始めると表明した。
■体が弱る黒い雨訴訟原告 控訴に「みんな後がないんよ」
https://www.asahi.com/articles/ASN8D7VVGN8DPTIL01D.html
朝日新聞デジタル 比嘉展玖、西晃奈 宮崎園子 2020年8月13日 1時30分
黒い雨を浴びた私たちを被爆者と認めて――。国の援護対象外の原告の訴えを全面的に認めた広島地裁判決に対し、国と広島県、広島市は12日に控訴した。援護拡大を視野に再検証する方針も示されたが、原告の人々は高齢化が進み、病を抱える。「もう、時間がない」。悲痛な叫びがあがる。
■黒い雨裁判 国の検討作業に参加要請 広島市
https://www.home-tv.co.jp/news/content/?news_id=20200821060700
広島ホームテレビ ニュース・報道 2020.08.21 11:46
原告が全面勝訴した「黒い雨」裁判をめぐり国が援護区域の拡大も視野に再検討する方針を示したことについて広島市の松井市長は20日国に検証作業への参加を要請したと述べました。
広島市の松井市長は「今までの科学的な知見に立ってというやり方をもう少し被爆者サイドにたって人道的な視点も加味した上で考えることはできないでしょうかということに尽きる」と話しました。
Twitterの反応!
「『黒い雨』訴訟、控訴方針で合意」
— 志位和夫 (@shiikazuo) August 11, 2020
広島で被爆者の方々と懇談した時に、84人の原告一人ひとりの被害認定を行った画期的な広島地裁判決に被爆者のみなさんがどんなに喜んだかが、次々に語られた。
それを控訴とは、この国の政府は、どこまで血も涙もないのか。 許せない。https://t.co/VF2gvsuAEN
「『黒い雨』裁判 全面勝訴/広島地裁 84人全員を被爆者認定」
— 志位和夫 (@shiikazuo) July 30, 2020
「大雨地域」だけを援護対象とした理不尽な国の「線引き」が断罪された。内部被ばくの重大性も言及された。国は、判決を受け、これまでの方針を見直し、すべての「黒い雨」被爆者を救済せよ!https://t.co/wplixliE02
「控訴しないことは官僚にはできません。大臣、総理にしかできないのです」
— 青木美希 (@aokiaoki1111) August 12, 2020
官僚が私に話しました。
なぜ控訴するのですか。時間がない方々が多くいるのは重々おわかりではないでしょうか。もともとの原告88人のうち16人が亡くなりました。原告は96歳から75歳です。https://t.co/xbj4ur6FMA
これはさすがに引いた。
— 5,000mAh (@mahjp2100) August 11, 2020
「黒い雨」訴訟で、国が一審判決を不服として控訴する方針とのこと…
この期に及んで、国が80代・90代の被爆者84人と争って何の意味があるんだ。何と戦っているんだ。
75年間苦しんできた国民を救済せず対決する姿勢の政府。
8月15日を前に、毎日嫌なニュースばかり。 https://t.co/YRuUYtCMal
#NHK
— 但馬問屋 (@wanpakuten) August 12, 2020
“「黒い雨」裁判 控訴”
安倍首相
「被爆という筆舌に尽くしがたい経験をされた皆さまに対する支援策にしっかりと取り組んでゆく」
国側が被爆者への補償をケチるために控訴するっていうのに、何で安倍首相が支援策をアピールしてるのか?
この人、控訴の意味わかってるんだろうか⁇😩 pic.twitter.com/GW0aaG7soI
松井広島市長は「毒杯を飲む心境」で控訴したんだね。被爆者健康手帳は勝訴した原告にだけ交付され、同じ境遇の人たちは別に訴訟を起こす必要があったからで、それが苦渋の控訴になったんだね。安倍さん、政治判断で救うべきだよ。命には限りがあるんだぜ。国のトップとしてたまにはいいことしようよ。
— 立川談四楼 (@Dgoutokuji) August 14, 2020
この訴訟の後に申請する人については少々「厳格」に対応するとして、ここで「控訴」することはそれこそ「人道に反する」。結果的に範囲を広げるという対応とは基本的に異なる「訴訟」なのだ。ぜひとも「控訴」取り下げていただきたい。
— 宮崎弘徳 (@kurasuppar) August 13, 2020
https://t.co/euTNJJjiZq #核といのちを考える
被告側の反応!
2020年8月12日(水)。原爆投下直後に降った放射性物質を含んだ所謂「黒い雨」を浴びて健康被害を受けた住民達の起した裁判を巡って、被告の「国」「広島県」「広島市」は協議した結果、全員を被爆者と認めた「広島地方裁判所」の判決を受け入れずに控訴期限の同日に「控訴」に踏み切っています。
県と市は国に控訴断念を申し入れていたものの三者による協議で、国は援護対象区域の拡大について検証する意向を表明した為に政府方針を受け入れました。広島県の湯崎英彦知事は「原告の気持ちを考えると辛い思いがあるが国の要請に従って控訴せざるを得ないとの判断に至った」と述べています。
広島市の松井一實市長は記者会見で「市としては政治判断で控訴しないよう要望したが国からは判決は十分な科学的知見に基づいていると言えないとして強く控訴の要望を受けていた」「被爆者健康手帳の交付は法律で定められた国の受託事務である事を踏まえて国と足並みをそろえて控訴せざるを得ないと判断した」と述べています。
原告側の反応!
広島県被団協の箕牧智之理事長代行は「ずっと闘ってこられた原告の皆さんの事を考えると控訴は容認できず被爆者団体としても腹立たしいこ事だ」とコメントしました。また、援護を受けられる区域の拡大も視野に検討を始めると政府方針を示した加藤勝信厚生労働相について「国が援護区域の拡大を本当に検討するか信用できない所があるが最後の1人まで被爆者を救うという精神で対応するよう要望したい」と話しています。
原告の高野正明原告団長(82歳)は記者会見で「広島市や県が国が提示した条件をのみ控訴を断念する勇気がなかったのは残念だ」「国は科学的根拠という言葉で判決を批判しているが結論ありきの逃げの姿勢で許す事ができない」と怒りを露にしました。また「裁判だけで5年が経ち私達の余命も長くはないので早く裁判に取りかかってほしい」と訴えています。
弁護団事務局長の竹森雅泰弁護士は「国はずっと要望を蹴ってきた」「(科学的知見に基づく再検証について)経緯を考えると『そうですか』とは言えない」と不信感を露にした。県と市に対しては「国の圧力が強かったと思う」「これまで一生懸命手を携えてきてくれた事については感謝している」とした上で控訴の判断には「残念としか言いようがない」と無念さを滲ませています。
黒い雨裁判について!
■「黒い雨」裁判 全面勝訴/広島地裁 84人全員を被爆者認定
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik20/2020-07-30/2020073001_03_1.html
新聞赤旗 2020年7月30日(木)
広島への原爆投下直後に降った放射性物質を含む「黒い雨」を浴びたのに国の援護対象外とされた地域の84人が、広島県と広島市に被爆者健康手帳などの交付却下処分の取り消しなどを求めている「黒い雨」訴訟の判決が29日、広島地裁でありました。高島義行裁判長は、原告全員の交付却下処分の取り消しと、被爆者健康手帳の交付を命じるなど、原告全員の請求を認める判決を出しました。
原爆投下直後に降った放射性物質を含んだ所謂「黒い雨」を巡って、国の定める援護対象区域外に住んでいた男女84人は「黒い雨を浴びて健康被害を受けた」として県と市を相手取って「被爆者健康手帳」などの交付申請について却下処分取り消しなどを求めて訴訟を起しました。
2020年7月29日(水)。広島地方裁判所は援護対象者の認定について「特定の降雨域を単純に当て嵌めるべきではなく『体験者の証言』を個々に吟味する必要がある」と指摘しました。その上で「黒い雨の降雨域はより広範囲で原告等はいずれも暴露したと認められる」と述べて原告全員に対して被爆者健康手帳の交付を命じています。
2020年8月4日(火)。原告団及び弁護団は原告全員を被爆者と認めた広島地方裁判所の判決に従って「控訴断念」及び「全ての黒い雨被爆者の早期救済」を政府に対し申し入れました。参院議員会館で開かれた野党共同会派の会合に出席した厚生労働省の担当者を通じて加藤勝信厚生労働相宛ての文書を手渡しています。
控訴は政治的思惑?
県と市は「援護対象区域の拡大」を国に求めていて今回の判決については「被害者救済」を重点に置いて控訴に消極的でした。厚生労働省は控訴を要請。安倍政権は交渉カードに援護対象区域の拡大の「検討」をチラつかせた事で県と市はやむを得ず控訴を受け入れました。
戦争体験者は年々減少して凄惨な戦争の記憶は風化しつつあります。原告84人の内12人は既に亡くなっています。今回の控訴は安倍政権の意向を強く反映したものです。文字通り原告の命が尽きるのを望んでいるのかもしれません。非常に残酷な展開です。





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