
2019年1月25日(金)。文化庁の「文化審議会著作権分科会の法制・基本問題小委員会(以下小委員会)」は「著作権法」の改正に関する最終報告書を纏めた模様。これまでは「映像」及び「音楽」の「違法ダウンロード」を「著作権侵害」と見做していました。今回は新たに「静止画」も違法対象になる事を指摘しています。また「写真」「漫画」「小説」「雑誌」「論文」などを「スクリーンショット」で保存する行為を処罰対象に加える方針です。パブリックコメントの反対意見はほぼスルーされた形です。
■文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会報告書の公表について
http://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/1413423.html
文化庁 平成31年2月5日
■「スクショ」違法に? DL違法化の拡大方針まとまらず
https://www.asahi.com/articles/ASM1S67BPM1SUCVL011.html
朝日新聞デジタル 上田真由美 2019年1月25日 21時42分
海賊版だと知りながらインターネット上にある漫画や写真、論文などあらゆるコンテンツをダウンロードすることを罰則付きで禁止する方針について、25日にあった文化審議会著作権分科会の法制・基本問題小委員会で予定通りに意見がまとまらなかった。刑事罰の対象範囲をもっと絞り込むべきだと反対意見が続出したためだ。文化庁は通常国会に著作権法の改正案を提出する方針を変えていないが、日程的な余裕がないとして小委員会での議論は打ち切りに。今後は委員から個別に聞き取りつつ、意見の取りまとめを目指す異例の事態となった。
■違法ダウンロードの対象拡大 漫画家らが反対集会
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190208/k10011809041000.html
NHK NEWS WEB 2019年2月8日 19時22分
インターネット上の「海賊版サイト」対策として、違法なダウンロードの対象を拡大することに反対する集会が国会内で開かれました。
インターネット上の「海賊版サイト」対策を強化するため、文部科学省は、音楽と映像が対象の違法なダウンロードの範囲を、漫画などの著作物すべてに広げることを検討しています。
これに反対する集会が8日国会内で開かれ、漫画家らおよそ100人が参加しました。
そして、日本マンガ学会の会長を務める漫画家の竹宮惠子さんが「参考資料を集めるための画像の保存が違法にならないか不安になる。漫画家や研究者を萎縮させる懸念が非常に大きい」と訴えました。主催した団体では、国の動向を注視しながら、今後も定期的に集会を開いていくということです。
Twitterの反応!
違法ダウンロードの対象拡大 漫画家らが反対集会 | NHKニュース https://t.co/W4B7s7LtmG ★何か漫画家がいっぱい集まって反対したようなタイトルですが、漫画家の登壇は2人で、特に私は出版社の言い分も尊重しましたからね!(^^;) 後は文化庁が色々忖度してくれることを望みます。
- 赤松健 (@enAkamatsu)2019/2/8
違法ダウンロード拡大の件、反復継続の限定なんぞではpixivのユーザーとかを救えないので、やはり、海賊版サイトから、原作のまま、原著作権者に損害を与えるような形でダウンロードしたような場合に、しっかりと限定してもらいたいねぇ。
- 荻野幸太郎 (@gi_fuji_npo)2019/2/5
テレビの録画が認められてスクショを撮るだけで違法になるのって面白過ぎるんですが、文化庁は何をやりたいのでしょうか?
- 楠 正憲 (@asanork)2019/1/26
再(スクショ違法?)そもそも短文のツイートが著作物なのかどうか?
- 三宅雪子(壁ではなく橋をかけよう) (@iyake_yukiko35)2019/1/29
「そこに今回、無断で投稿された「静止画」も違法の対象になると指摘。マンガや写真、小説、雑誌、論文などの“スクリーンショット”も対象になるという」
ツイートのみならOK個人の写真はNO?
BIGOBEニュースhttps://t.co/URlIQCLxV7
もしもスクショが違法化されて、更に
- MiSA(元しえん)KAORI (@ien_666_sien)2019/1/26
単純所持まで違法になったら
例えばそこら辺の人を適当に職務質問
↓
スマホを見せてもらう
↓
違法なスクショがないかチェック
↓
それっぽいの見つけたら即逮捕
逮捕してから調べをするから
それっぽいってだけで全員容疑者にできるし逮捕もできてしまう。
スクリーンショットの違法化で大規模な「表現/言論統制」可能に!
文化庁は「インターネット上に無断でアップ(投稿)された『著作権侵害コンテンツ』を『海賊版』である事を確定的に知りながらパソコンやスマートフォンなどの端末に『複製』する行為」を全面的に禁止にする方針です。今回のポイントは「静止画」を処罰対象にした事です。更に「著作権侵害コンテンツの映った画面」を撮影してメモ代わりに「画像」として端末に保存する「スクリーンショット」も違法化します。驚愕の事態です。
具体的な罰則は「有償で提供しているコンテンツ」の「海賊版」をダウンロードした場合に「2年以下の懲役又は200万円以下の罰金」を科します。文化庁の募ったパブリックコメントに寄せられた意見は「534件」で「インターネット利用の萎縮」や「処罰対象の拡大による捜査権の濫用」を懸念する声で大半を占めています。
尚、小杉・吉田・梅宮法律事務所の吉田圭二弁護士は「違法と知りながら画像などをダウンロードする行為と変わりないので、『スクショ』を規制するのはやり過ぎではない」と指摘しています。また、現行法で「海賊版サイト」を規制する事は不可能だとして「利用者を取り締まった方が実効性がある」との見方を示しました。前時代的で危険な発想です。
一方で、小委員会の審議で神戸大学大学院准教授の前田健氏は「多くの国民から疑問や不安の声が寄せられている」と警鐘を鳴らしました。国民にとっては最も重い制裁手段である「刑事罰」の重みを踏まえて「刑事罰の対象範囲を絞るべきだ」とする意見書を他の4人の委員と連名で提出しています。
前述の意見書では「インターネットに関わる国民の日常的な私生活上の幅広い行為が刑事罰の対象となる」「刑事罰の制定には特に慎重に慎重を重ねた議論が必要だ」と綴っています。処罰対象を「海賊版サイトの利用と直接関係ない行為」にまで広げないように求めています。
インターネット上は「ネット使ってる国民全員逮捕の対象になる」「スクショ違法ならスクショ機能無くすべきだ」「テレビ番組の録画はOKでスクショを撮るだけで違法になるのはオカシイ」など当然の反応で溢れています。本件は要するに「電子データ」の「所持(保存)禁止」です。
表現規制反対派に分かり易く言えば「児童買春・児童ポルノ禁止法」の「所持罪」と問題点はほぼ共通しています。一応は「有償」「海賊版」「反復継続」などの文言で刑事罰の対象範囲を絞り込みました。しかし、元々桁違いに広範囲の行為を処罰対象にしているのでほぼ無意味です。表現規制案としてはトップクラスの危険度です。
法改正そのものを阻止するべき!
2019年2月8日(金)。漫画家の赤松健氏らは国会内で反対集会を開きました。表現者・出版業界・IT業界は懸念を表明しています。しかし「非実在青少年」の時と比べて内容的にほぼ進歩していません。結局「規制強化」は不可避な情勢です。厳しい状況なのは理解してますけどドンドン「ジリ貧」になっている感は否めません。政治的なアプローチは圧倒的に不足しています。
パブリックコメントに反論している時点で文化庁の方針は既に規定路線です。現時点で通常国会に「著作権法改正案」を提出する方針は変えていません。只、日程的な余裕はないとして小委員会は議論を打ち切りました。まだ「付け入る隙」はあります。法改正の建前は「海賊版サイト対策」です。しかし「丁度いい規制」はあり得ません。被害者である筈の表現者・出版業界・IT業界は「断固反対」の声を上げて法改正そのものを阻止する方向で戦うべきです。
本件は表現規制的に「妥協できるか否かのボーダーライン」を遥かに超えています。静止画ダウンロードの違法化は法律の運用次第で最凶レベルの「表現/言論規制法」に変貌します。インターネットを利用した「政治活動」及び「情報拡散」に与える影響は深刻です。例えば先に摘発された海賊版サイト「漫画村」について証拠を添えた記事を書けなくする事も出来てしまいます。落とし所を見つける戦い方は絶対にNGです。妥協ありきでは話になりません。




