
■静止画ダウンロードの違法化を推進する理由、講談社の見解
https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00001/01245/
日経×TECH(クロステック) 2018/11/12 05:00
リーチサイト規制と静止画ダウンロード違法化は、ここ数年コンテンツ業界が政府に検討を要請していた。特に静止画ダウンロード違法化は、コミックを販売する出版社の悲願でもあった。映像や音楽については「著作権侵害コンテンツである事実を知ったうえでダウンロードする行為」が違法である一方、電子コミックなど静止画はその範囲に含まれていなかったためだ。
政府の有識者会議などで2つの規制がたびたび議論の俎上にのぼったが、国内ネット企業を中心に「一般ユーザーへの影響が大きい」「乱用される恐れがある」などの反対があり、法改正に至らなかった。
だが2017年から2018年にかけて「フリーブックス」「はるか夢の址」「漫画村」など、電子コミックの大規模海賊版サイトが相次ぎ登場。検討会議は海賊版総合対策の一環として、広告出稿の抑制やフィルタリング強化などと並び、リーチサイト規制と静止画ダウンロード違法化を検討する方針についておおむね合意を得た。
なぜ出版社は静止画ダウンロード違法化を求めていたのか。今後、海賊版サイトへどのような対策を講じるのか。講談社の乾智之広報室長に聞いた。
ブロッキングの法制化は慎重!
ACE-MAN氏に頂いた情報。所謂「海賊版サイト」の対策を巡る大手出版社「講談社」の見解です。乾智之広報室長は「この半年間の議論で専門家の多くは『ブロッキング法制化は憲法に触れるのでは』と声を上げ世論もそれを支持した」「そんな中でブロッキング法制化の推進が最優先事項になる事はあり得ない」と明言しました。一方で「講談社にとって優先順位の1、2位は『リーチサイト規制』と『静止画ダウンロード違法化』だ」「その次に新たな法整備を伴わないフィルタリングや広告出稿抑制、著作権の普及啓発などがある」と述べています。
ブロッキングの法制化に慎重な点は評価できるものの後者は本当に危険な発想です。端的に言って「インターネット」の仕組みを理解しているとは思えません。あくまで「抑止効果」を目的しているもののそれだけに留まる事は絶対にあり得ないのです。著作権者の権利を守る事は同意します。しかし「静止画(書籍)のダウンロード違法化」はメリットに比べてデメリットの方は桁違いに大きいです。
対象範囲を絞らずに非現実的に違法化すれば「順法意識」は希薄になります。結果的に「業績」は改善せずに更なる規制を求める悪循環。出版業界は「目的」「目標」「手段」を完全に履き違えています。静止画であれ動画であれインターネット上で「閲覧」しているモノの合法か違法かの判断はできません。まずは「違法アップロード」の取り締まりを徹底するべきです。
リーチサイトの規制は一考の余地?
一考の余地があるのは「リーチサイト」の規制です。リーチサイトは「著作権者の許可を得ずにインターネット上にアップロードされたコンテンツ(漫画など)」に利用者を誘導する為の「リンク集」です。日本最大級の海賊版リーチサイトと言われた「はるか夢の址(あと)」の摘発事件は記憶に新しいと思います。
海賊版サイトにインターネット利用者を誘導するサイトの規制は「違法アップロード」に確実にダメージを与えられます。一方で、所謂「アンテナサイト」のリンク先の「URL」を第三者に書き換えられた時点で逮捕は可能になってしまいます。線引きは困難で例えば「YouTube」にアップロードされた動画のリンクもアウトになりかねません。
静止画(書籍)のダウンロードの違法化!
一応「書籍」と限定的に書かれているものの線引きはリーチサイト以上に困難です。例えば「Pixiv」のような「イラスト投稿系SNSに投稿された作品」や「同人誌」など「二次創作」は対象になるか否かなど疑問は尽きません。インターネット上には「著作権フリーではあるもののサイト閉鎖やURL変更で証明不可能になった作品」は山のようにあります。
技術的な話で言えば「キャッシュ」の扱いも微妙です。まず「キャッシュ」を対象外にすれば「ストリーミング型のサイト」に流れるだけで根本的に「抑止力」になりません。しかし「ストリーミング」をアウトにすれば「対象範囲」はほぼ無制限に広がります。
また、この2つは「ブロッキング」と同じく「憲法21条」で定めた「通信の秘密」及び「検閲の禁止」に抵触する事は間違いなく整合性は疑問です。憲法21条に抵触しないとの解釈でゴリ押しできる範囲の規制は絶対にあり得ません。
規制強化の無限ループ!
最後に「法律」の仕組み上も本当に危険です。一度制定された「法律」の「その先」は「適用範囲の拡大」以外に選択肢はないのです。言うまでもなく適用範囲の拡大は権力側に一任する事になります。後は延々と規制強化を繰り返す事になります。将来的に捜査当局は「違法ダウンロードしているか否かを『監視』するシステム」に踏み込んでくる事は確実です。
表現規制反対派は断固反対を!
音楽業界も出版業界もそれぞれの事情は察します。しかし、自分達の「旧態依然としたビジネスモデル」の為に「インターネット」の「利便性」を破壊する事は絶対に許してはなりません。表現規制反対派にとっては「リトマス紙」になる案件です。
本来は「味方」である筈の出版業界の「自爆」で終了では笑い話にもなりません。繰り返しになりますけど「表現規制案」としては児童ポルノ」の「閲覧罪」を遥かに凌ぐインパクトです。表現規制反対派は「断固反対」の声を上げ続けるべきです。
再掲。文化庁は既に「処罰化」を前提に「具体的な制度設計」に入っています。与野党の議席差を考慮して困難なのは承知の上で言えば「線引き」いかんに関わらずこれは確実に葬らなければなりません。インターネットの仕組み上「妥協」を勝ち取る程度では問題の解決は不可能です。所謂「フェアユース」の導入も必須です。まずは「野党」を「反対」で纏めて「世論を喚起」しなければなりません。




