■もし「共謀罪」が成立したら、私たちはどうなるか【全国民必読】
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51376
現代ビジネス 講談社 高山佳奈子 京都大学大学院教授 2017.04.07
オリンピック・パラリンピックの東京開催が決まった2013年までの間に、政府の犯罪対策計画においてオリンピックのための共謀罪立法が論じられたことはなく、共謀罪立法がテロ対策の一環として位置づけられたこともないという事実が明らかになっている。筆者は五輪招致を管轄していた文部科学省の事業で、2013年3月までドーピング対策の研究班を率いていたが、やはりそのような話は非公式にも聞いたことがない。
日本にはすでに予備罪や抽象的危険犯の広範な処罰規定があることから、国連条約締結のために共謀罪立法は必要ないと考えられる上に、2004年に国連から各国向けに出された公式の「立法ガイド」にも、共謀罪処罰の導入は義務でないと明示されている。実際、条約締結のために共謀罪立法を行った国としては、ノルウェーとブルガリアの2ヵ国しか知られていない。
■日本政府「テロは対象外に」国際組織犯罪防止条約起草時「共謀罪」論拠崩れる
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2017-03-23/2017032301_03_1.html
新聞赤旗 2017年3月23日(木)
安倍政権が「共謀罪」法案を必要だという最大の口実にしている国際組織犯罪防止条約(TOC条約)をめぐり、条約の起草過程で日本政府が「テロリズムは本条約の対象とすべきでない」と主張していたことが明らかになりました。外務省が日本共産党の仁比聡平参院議員に提出した資料で判明しました。「共謀罪」を正当化する政府の論拠が改めて崩れました。
TOC条約の批准に「共謀罪」は必要ない!
政府・与党が共謀罪の法制化の根拠にしている「国際組織犯罪防止条約(TOC条約)(パレルモ条約)」に関するデマについて大まかに書いておきます。正式名称は「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」で国連は2000年に同条約を採択、日本は同年に調印、締約国は同条約に従って国内法を整備する義務が生じる事になります。
安倍晋三は国会で「国際組織犯罪防止条約を締結していないのは世界で11カ国」「G7では日本だけで日本が国際社会における法の抜け穴となる訳にはいかない」「世界各地でテロが続発する中3年後には東京オリンピック・パラリンピックの開催を控えるなどテロ対策に万全を期す事は開催国の責務だ」と述べました。政府・与党はこれに追随して日本は国際社会に遅れていると指摘しています。
只、国際組織犯罪防止条約の選択肢は2つあって「国際的組織犯罪集団に参加する参加罪」若しくは「長期4年以上の懲役又は禁錮の法定刑を定める共謀罪」のいずれかを制定を締約国に義務付けています。しかし、国連の「立法ガイド」の第51項では「参加罪や共謀罪の概念を持っていなかった国がこれらを導入せずに組織犯罪集団に有効な措置を講ずる事も条約上認められる」としています。
要するに、形式的にすべての罪の共謀罪の処罰を求めるものではないのです。多くの締約国は共謀罪の法制化を行わずに条約の目的に沿った形で自国の法制度に適合する法改正で対応しています。ちなみに、民進党(民主党)は与党時代これに従って「共謀罪なしの条約締結」を目指していました。政権担当期間が短かった事や東日本大震災の影響で時間的な余裕が無かった事で頓挫しています。
TOC条約の目的は「国境を越える経済犯罪」対策!
国際組織犯罪防止条約はマフィアや暴力団によるマネーロンダリングなど「国境を越える経済犯罪」の取り締まりを目的にしたものでテロ対策の条約ではありません。政府・与党は条約の目的を確信犯的に捻じ曲げて「テロ対策の条約」として宣伝しているのです。
国連は国際組織犯罪防止条約とテロ対策の関連条約を明確に区別しています。日本はすでに後者に関わる13本の条約を批准している上に国内法を整備しています。
組織的犯罪集団の定義!
国際組織犯罪防止条約は「組織的犯罪集団」を「三人以上の者から成る組織された集団」で「一定の期間存在」し尚且つ「金銭的利益その他の物質的利益を直接又は間接に得る為一又は二以上の重大な犯罪又はこの条約に従って定められる犯罪を行う事を目的」に「一体として行動するもの」と定義しています。
2005年の衆議院法務委員会。南野知惠子法務大臣(自民党)は「宗教目的や政治的目的で作られた団体が純粋な精神的な利益のみを目的として犯罪を行う場合にはこの条約に言う「組織的な犯罪集団」には当たらない事となると考えられる」と答弁しています。
極めて厳しい日本の法制度!
日本の法制度の特徴は「予備罪」や「準備罪」を極めて広く処罰している事にあります。刑法は「罪刑法定主義」によって「構成要件」で決めた害悪が起きた場合に「刑罰」を科す事を原則にしています。基本的に「未遂」や「予備」を処罰するのは「殺人」や「強盗」など重犯罪に限ります。
予備罪や準備罪の具体例は「殺人予備罪」「放火予備罪」「内乱予備陰謀罪」「凶器準備集合罪」「爆発物取締罰則」「破壊活動防止法」などが挙げられます。特別法による「予備罪」「陰謀罪」「教唆罪」「扇動罪」の処罰が広く法制化していてその数は数十種類に及ぶそうです。
共謀罪は刑法の大原則を180度変える法律です。中身を議論する以前に「法案制定」の「論拠」は崩れているのです。共謀罪の狙いはテロ対策ではありません。政府・与党の主張は明らかに詭弁で真の目的は「等」にある事を踏まえて私達は冷静に判断する必要があります。




