「共謀罪」法案 テロ対策便乗の悪法だ
http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/opinion/editorial/2-0080691.html
北海道新聞 どうしんウェブ/電子版(社説) 2016年09月02日 金曜日 08時55分
政府は過去3度廃案になった「共謀罪」の新設について、罪名を「テロ等組織犯罪準備罪」に改めるなどした組織犯罪処罰法改正案をまとめた。今月召集の臨時国会への法案提出を検討している。
犯罪の共謀だけでは罪とせず、従来の案の適用要件に資金集めや物品取得などの「準備行為」を追加した。適用対象は「団体」から「組織的犯罪集団」へと狭めた。
だが、市民生活の自由を侵し、監視社会を助長する懸念がある悪法に変わりはない。特定秘密保護法、安全保障法制に続き、安倍政権は問題のある政策を選挙では封印し、終われば強引に進める手法をまたも繰り返そうとしている。民主主義のあり方としても認められない。
共謀罪は従来の案では、犯罪実行の合意があるだけで処罰対象とされた。行為を罰する刑法の原則に反し、憲法が保障する思想・信条や集会・結社の自由を侵害するとの危険性が指摘されてきた。そこで適用範囲を限定し、2020年の東京五輪・パラリンピックに向けたテロ対策と位置付ければ理解されると踏んだのだろう。
しかし捜査当局の拡大解釈を許す懸念はなお残る。まず、組織的犯罪集団の定義があいまいだ。さらに、対象となる罪は「4年以上の懲役・禁錮刑が定められている」もので従来と変わらない。その数は600を超え、窃盗や詐欺、道交法違反なども含まれる。
罪名の「テロ等」の「等」は、摘発されるのがテロの準備行為だけではないことを示す。準備行為の具体例にも、解釈を広げる「その他」が付く。例えば沖縄米軍基地反対のデモで路上に寝転び警察車両を止めようと計画し、何らかの準備に入っただけで、組織的威力業務妨害準備の疑いで逮捕されかねない―。
共謀罪に詳しい弁護士からはこんな指摘も出ているという。
摘発の網を広げておき、やがては共謀や準備行為立証のために通信傍受などプライバシーに踏み込む捜査が横行し、市民生活の監視が強まることが懸念される。共謀罪新設は、国連が00年に採択した国際組織犯罪防止条約締結に向けた国内法整備として必要というのが政府の主張だ。
だが日弁連は、日本には殺人など重大犯罪の準備段階で処罰できる規定が整っており、共謀罪がなくても締結は可能と反論する。テロへの不安に便乗し、重大な人権侵害の恐れがある法律を作ることは許されない。
共謀罪(テロ等組織犯罪準備罪)について。自民党の二階俊博幹事長は、9月2日のTBSの番組収録で「準備が整えば提出する」と発言しました。公明党の山口那津男代表は、法務省が国会提出の準備を進めている事に理解を示して容認したと報じられています。今秋の臨時国家で動き出すのはほぼ間違いない情勢になっています。
国際組織犯罪防止条約とは?
政府・与党が共謀罪(テロ等組織犯罪準備罪)の制定を目指すのは今回が初めてではありません。国連が2000年11月に国際テロの不安が広がっている事を理由に「国際組織犯罪防止条約」を採択、これに伴いこれまで条約締結の為に国内法の整備を進めていました。2003年(第一次安倍政権)から何度も関連法案が国会に提出、恣意的な運用の危険性が払拭されないとの強い反対によっていずれも廃案になっています。
テロ等組織犯罪の準備は現行法で対応可能!
内田博文氏(神戸学院大学教授)(刑法学)によれば、犯罪の準備段階の行為を処罰する事は現行法でも対応が可能で共謀罪は不要と指摘しています。殺人予備罪など刑法には複数の「予備罪」が規定されているそうで「準備行為」を処罰する事ができるようです。
政府・与党は「現行法で対応できない」というのであれば「具体的な立法事実」を示した上で議論すべきだと思います。このまま修正せずにゴリ押しされれば過去の「治安維持法」と同様に、恣意的な運用で市民活動などの弾圧に繋がる恐れがあります。
名称変更は悪法の証明!
東京五輪やラグビーW杯の開催に向けてテロ対策強化が急務である事や与党が圧倒的多数を占める事になった国会の情勢もあって、今回、政府・与党は「テロ対策強化」を前面に押し出して反対し難いように「テロ等組織犯罪準備罪」に名称を変えて法案成立に意欲を燃やしています。
本来、この法律の最大の問題は「恣意的な運用」によって私達一般国民の「思想・信条の自由=基本的人権」が侵害される危険性がある事です。しかし、テロ対策強化を前面に押し出した名称に変更すればまるで「テロ対策限定」であるかのような印象を与えられます。
これは反対派に「テロに賛成なのか?」というレッテルを張る事が狙いです。すでにネトウヨ&ネトサポはこれを反対派バッシングの根拠にしています。政府・与党は「特定秘密保護法」で似たような手法を使っていました。これこそ共謀罪(テロ等組織犯罪準備罪)が悪法である証明と言っても過言ではありません。




