特定秘密保護法案を問う:国際指針「ツワネ原則」に照らし見直しを
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131122-00000019-kana-l14
[カナロコ by 神奈川新聞 11月22日(金)12時0分配信]
国家の秘密保護と国民の知る権利は対抗する。しかし、バランスを取ることは可能だ-。政府による秘密の指定において知る権利や人権など配慮すべき点を示した「ツワネ原則」と呼ばれる国際的なガイドラインがある。特定秘密保護法案の今臨時国会での成立が見込まれるなか、日本弁護士連合会は「原則に照らし、秘密指定の範囲や方法、期間、解除方法、処罰対象など多くの欠陥がある」と指摘。「法案をいったん白紙に戻し、全面的に見直すべきだ」と訴える。
「この法案には、ツワネ原則への適合性を検討した形跡が全くない。政府は原則の存在を知らなかったのだろう。いまからでも遅くない。勉強し直すべきだ」
日弁連秘密保全法制対策本部で副本部長を務める海渡雄一弁護士は、横浜市内で開かれた講演会でそう切り出した。
ツワネ原則の正式名称は「国家安全保障と情報への権利に関する国際原則」。今年6月、南アフリカの都市ツワネで公表されたことに由来する。国連や欧州安全保障協力機構など国際機関の関係者、安全保障や人権、法律の専門家が参加した。その数は70カ国、500人超。2年間、14回の会議を経てまとめられた。
50の原則からなり、うち15項目は特に重要視すべきとされている。
原則はまず「誰もが公的機関の情報にアクセスする権利を有する」という前提に立つ。
防衛計画や兵器開発、情報機関で使用される作戦・情報源など限られた範囲で情報の制限を認め、その上で「知る権利を制限する場合、政府がその正当性を説明しなければならない」とする。知る権利を「配慮する」とし、さらに努力規定にとどまる法案は出発点からして国際水準から外れている。
■秘密にしてはならない
原則では「人権、人道に関する国際法の違反についての情報は決して制限してはならない」などと、秘密指定してはならない情報についても規定する。
一方、法案は特定秘密として(1)防衛(2)外交(3)特定有害活動(スパイなど)防止(4)テロ防止-の4分野23項目を定める。だが、抽象的な表現な上、それぞれの分野に「その他の重要情報」という文言があり、解釈次第で対象は広範囲に及ぶ恐れがある。
そして何より、「何を秘密にしてはならないかという観点からの記述が全くない」と海渡弁護士。
「政府が違法な行為をしているという事実は当然、隠されてはならない。しかしその規定がなく、秘密指定されてしまえば、これまでかろうじて暴かれたような違法行為は永遠に明らかにならなくなる」
例えば米国では、法令違反や行政上の過誤といった情報は秘密指定してはならないと明文化されており、「米国からの要請に言いなりで法整備をするのなら、同程度の規定を盛り込むべきではないか」と皮肉る。
政府の暴走や不正隠しを防ぐためには秘密指定の妥当性を検討できる監視機関が必要で、それは独立した第三者機関でなければ意味がない。
法案はどうか。当初案には明記されておらず、野党との修正協議で議論となった。監視機関の設置検討で一致したが、行政トップの首相が関与するという。これでは政府の恣意的な秘密指定に歯止めをかけることができる保証はない。
指定期間についても「必要な期限に限るべきで無制限であってはならない。最長期間は法律で定めるべき」とする原則との違いは明らかだ。上限5年の指定期間は延長ができ、与野党の修正協議の結果「最長60年」としながら、7項目の例外が設けられている。
原則が求める国民や第三者が秘密指定の解除を求める手続きについての規定もない。海渡弁護士は「指定の解除は行政の長の全面的な裁量に委ねられ、秘密解除の請求権もないというのはひどい話だ」と嘆く。
■問われる人権への認識
弁護士の立場から問題点を強調するのが、法案の罰則規定や罪に問われた際の秘密の扱いだ。
原則では「ジャーナリストや市民が秘密を得たり、公開したり、探ったりしても処罰されるべきではない」と明記。法案では公務員以外も処罰され、漏えいを共謀したり、そそのかしたりしたとみなされれば罪に問われる。刑事裁判は、問題とされた秘密が明らかにされないまま進行する恐れもある。
内部告発者に関する規定もない。「内部告発者が特定秘密を明らかにしたとしても、それによって社会が受けた利益の方が大きければ、その告発者を罰してはいけない。原則は処罰できる場合を制約しているが、法案には示されてもいない」国会議員であっても秘密を漏らせば処罰対象となり、「国会が行政を監視するのではなく、行政によって国会が支配されかねない。それでは国の最高機関としての性格を奪われてしまう」。
ツワネ原則に照らし、次々と欠陥を指摘する海渡弁護士だが、見直しを求めるのは今回の法案にとどまらない。国家公務員法、自衛隊法など情報漏えいへの罰則を定めた他の法律についても「いずれも国際水準に達していない。全面的な見直しが必要だ」。問われているのは、民主主義の基礎をなす国民の知る権利、広くは人権に対するこの国の認識だ。政府は、安全保障において同盟国との情報共有ができないと法案の成立を急ぐが、かえって国際社会の軽蔑を招きかねない。「法案の成立を止められるかどうかに、この国の未来がかかっている」
◆かいど・ゆういち
東京大学法学部卒。81年弁護士登録。第二東京弁護士会所属。前日弁連事務総長。58歳。
ツワネ原則の重要15項目
(1)国民には政府の情報を知る権利がある
(2)知る権利を制限する正当性を説明するのは政府の責務である
(3)防衛計画や兵器開発、諜報機関など限定した情報は非公開とすることができる
(4)しかし、人権や人道に反する情報は非公開としてはならない
(5)国民は監視システムについて知る権利がある
(6)いかなる政府機関も情報公開の必要性から免除されない
(7)公益のための内部告発者は、報復を受けない
(8)情報漏えいへの罰則は、公益を損ない重大な危険性が生じた場合に限られる
(9)秘密情報を入手、公開した市民を罰してはならない
(10)市民は情報源の公開を強制されない
(11)裁判は公開しなければならない
(12)人権侵害を救済するための情報は公開しなければならない
(13)安全保障分野の情報に対する独立した監視機関を設置しなければならない
(14)情報を無期限に秘密にしてはならない
(15)秘密指定を解除する手続きを定めなければならない
AAA氏より頂いた情報。素晴らしい記事なので拡散希望です。日弁連秘密保全法制対策本部が「法案を白紙に戻し全面的に見直すべきだ」と指摘。ツワネ原則への適合性を問題にしています。この「ツワネ原則」というのは国連など多くの国々が参加した会議で纏められた国際指針です。私自身詳しくは知りませんでしたが反対派にとっては大きな武器になります。只、自分達に都合の悪い国際基準は無視するのが自民党です。これで止める事が出来るか否かは微妙ですね・・・。
反対派の声がかなり大きくなっています。この法案に関しては良識的な議員も少なくないのでやり方次第では更なる改善も可能です。上記の記事もしくはツワネ原則について広く浅く周知してください。可能な方は地元議員に陳情を御願いします。
国家安全保障と情報への権利に関する国際原則(ツワネ原則)
http://www.news-pj.net/pdf/2013/tsuwanegensoku.pdf
日弁連訳のツワネ原則全文。ちょっと長いですが分かり易いので時間のある方は読んでみてください。秘密保護法案対策の切り札になり得るので必読です。只、欧州評議会の議員会議で引用されている以外に「公的機関」で採用された例は無いそうです。如何に政治家に周知するかが重要です。
【tetsu_fuji's diary】秘密保護法は「ツワネ原則」で見直せ
http://fujisawa.hatenablog.com/entry/2013/11/10/182203
世論は日本の国民の8割以上が秘密保護法の慎重審議を求めている。反対も過半数に上る。(共同通信10/28)
ニューヨークタイムズも、社説(Editorial Board名)で日本版NSCで対北朝鮮のみならず中国部門を掲げたことに表れる安部政権の対立姿勢と併せて秘密保護法案に警戒を示している。
国民の大多数と、加えてアメリカの世論まで敵に回してごり押しできるはずはない。そもそも、アメリカの安全保障のために作ろうとしていた法律ではなかったのか。アメリカに警戒されるようでは自民党にとってでさえ、大きなマイナスだろう。
秘密保護法案に共産、生活、社民三党が明確に反対しているものの、民主党の態度がはっきりしない。
日米の世論に反して、ごり押しすべきではないし、できるはずがない。
衆院国家安全保障特別委員会の筆頭理事を務める自民党・中谷氏が「修正に応じる」柔軟姿勢を示したのは当然の流れ。これから今国会の会期末12月6日まで、修正協議を中心とした綱引きが焦点になるが、小手先の修正で妥協してはならない。
国民の知る権利と国家秘密の間の調停は、普遍的な課題であって、今年の夏、世界各国の有識者が集まって作ったツワネ原則と呼ばれる国際標準がある。ツワネ原則をお手本として抜本的に見直すべきだ。
野党第一党の民主党にはこれをリードする責任がある。
ツワネ原則と現法案を比較すると多くの問題点が浮かび上がる
秘密指定をチェックする第三者機関を設置すること。この第三者機関にはすべてを知る権利が与えられる。
国際法(国際人権法・国際人道法)に反する事実を秘密指定してはならない。
秘密保護法違反の裁判では裁判の争点となる秘密が関係者に開示されること。
公益にかなう内部告発者を処罰しないこと。
いずれの項目も民主主義・人道主義・人権保護の観点から必須のものであって、厳格に保障される必要がある。逆に言えば外交・国家安全保障のための国家秘密はその程度に制限されるべきである。
岡本徹氏のブログより転載。太字の部分に要注目。この記事は11月10日のものなので状況は多少変わってますが、ツワネ原則と現法案の比較を民主党に伝え野党を纏めて問題点の修正を呼び掛けて貰うのは有効だと思います。弱体化したとはいえ民主党はギリギリで野党第一党です。




