【骨董通り法律事務所】「TPP米国知的財産条文案(2011年2月10日版)を抄訳してみた」
http://www.kottolaw.com/column/000438.html
1 最終段階で議論沸騰したACTA(偽造品取引防止協定)も国会で可決され、日本は最初の批准国となるようだ。これはこれで別途コラムを書くが、他方、長期戦必至の様相を呈して来たTPP(環太平洋連携協定)交渉。カナダ・メキシコの正式参加決定で分野別交渉の進展も伝えられるが、知財に関して届くのは「難航」の報道ばかり。2012年5月には全米の主要な33の知財系ロビイ団体が連名で、オバマ大統領に「TPPの知財交渉での強硬姿勢」を迫る公開書簡を送り(プレスリリース)、他方、8月末にはEFF(電子フロンティア財団)など各国の有力NGOが米国提案への反対意見を連名で公開するなど、お膝元・米国を中心にTPP知財をめぐる議論は激しさを増している(記事)。
さて、流出した米国の知財要求案については昨年来幾つかコラムを書き、さまざまな反響を頂いて来たが、なにせ原文の難敵ぶりはACTA以上。流出した知財の章だけでACTAの1.5倍以上の長さで、「翻訳がないと皆さん不便だろうなー。誰かやってくれないかなー」と待つこと1年半。そんな天使はどこからも舞い降りて来なかった。
そこで今回、「ネットの自由」「TPP」「知的財産権」をキーワードに4冊目の新書を書くにあたり、思い切ってひとり翻訳プロジェクトを敢行。・・・が時間の無さと全訳では長すぎるのであっさり方針転換して、「日本法に影響を与えそうな部分の抄訳」を作り、新書末尾に掲載した。ラフな訳だが、今後の議論の役に立つこともあろうと思いネットでも公表する。
そして、弊所のコラムの歴史で初めて、CCライセンス「表示-継承」とした。営利・非営利を問わず、転載・再利用は自由。訂正や未訳部分の追加大歓迎。ただし、「継承」ライセンスだから、作った改善版・拡張版を同じ「CC:表示-継承」で公開して頂くのが唯一の条件だ。そう、時代は「シェア」である。心配なのは次の知財条文リークが出ると途端に時代遅れになってしまうことだが、リスクの無い人生はない。新しいリーク文書との比較にも使えるしさ。
注意が数点:
・TPPの米国知財要求のうち、現在の日本法には必ずしも含まれない規定を中心に、特に重要と思われた項目の参考訳である。それでも11000字超。
・翻訳の正確性については保証しない。というより無料公開なので、誤謬については当然寛容の精神を求める。内容は2011年2月10日付の流出文書に基づいており、現時点で協議されている条文と一致するとは限らない。国内法令の用語は参考にしたが、理解しやすさのために異なる用語を用いた箇所がある。
・脚注などは除外し、コラム等で言及した主な条文箇所には、便宜のため下線を付した。
・今後、修正や拡充版を適宜アップする可能性があるので、最新版をご確認のこと。
なお、CCライセンスはあくまで翻訳部分が対象。原文については、リーク文書という性格と公開の意義に鑑み筆者は翻訳・出版に踏み切ったが、公に使う方はどうか各自のご判断で。
2 内容の解説は前述のコラムや、それこそ間もなく発売の新書をどうぞ^^! だが一応、米国要求に入っていて、現在の日本法にはない主な条項だけはリストアップしておこう。
①音、匂いにも商標(2.1項)
②電子的な一時的記録も複製権の対象に(4.1項)
③真正品の並行輸入に広範な禁止権(4.2項)
④著作権保護期間の大幅延長(4.5項)
⑤アクセスガードなど、DRMの単純回避規制(4.9項)
⑥診断、治療方法の特許対象化(8.2項)
⑦ジェネリック医薬品規制(医薬品データの保護)(9.2項)
⑧法定損害賠償金の導入、特許侵害における3倍額賠償金の導入(12.4項)
⑨著作権・商標権侵害の非親告罪化(15.5(g)項)
⑩「ノーティス・アンド・テイクダウン」「反復侵害者のアカウントの終了(いわゆる3ストライク・ルール)」を含んだ、米国型のプロバイダーの義務・責任の導入(16.3項)
うむ、まるで知財版「アベンジャーズ」。改めてオールスター・キャストである。まあ後から交渉に参加しながら、これだけオレ基準で他国に要求できる米国政府のタフ交渉ぶりは、やはり日本も見習うべきかもしれない。
福井健策弁護士の抄訳。ちょっと長いですがリンク先は必読。音や匂いにも商標、電子的な一時的記録も複製権の対象、診断や治療法の特許対象化、ジェネリック医薬品規制と基地外沙汰のオンパレードでACTAと比べてその危険度が桁違いである事が分かります。
すでに危険視されている「著作権法違反非親告罪化」だけでなく「3ストライクルール」まで含まれており「インターネット利用者皆殺し条約」と言っても過言ではありません。米国は「フェアユース」があるのでバランスが取れてるんでしょうがそれすら無い日本では最悪な結果となります。
TPPに関する意見取りまとめ
http://www.npu.go.jp/policy/policy08/pdf/20120426/20120427_1.pdf
反対用資料。各都道府県の意見書。殆どが「慎重」もしくは「反対」と答えています。
これはロビイングや手紙で意見する際に有効。まずは地元の議員(特に民主党)に広めてくだされば幸いです。
No title
日本国内においてはやはり状況はあまり良くないようですね…
管理人様が仰るように、やぶれかぶれで参加の可能性も充分にありえそうです。
推進姿勢を鮮明に TPP交渉参加で首相 (2012年10月12日)
http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=17104
その一方でこういう話もありますが…
COPA役員インタビュー EPA 相互の利益に TPP 阻止支援する (2012年10月13日)
http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=17157
2012-10-15(17:58) : 92a URL : 編集
野田総理だけが突っ走って民主党も国民も道連れにしようとしてるとしか思えません。
守るべきものは守り抜くと言ってるがどうする気なのか疑問。米国に物申す事ができるんでしょうかね?。
TPP、複数分野で事実上合意 交渉の中核は難航
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/economic/404511.html
北海道新聞9月16日の記事。TPPの中核は「知財」「環境」「国営企業」の3つとの事です。
TPPは、自由な言論と健康を切り捨てるな!
http://www.amnesty.or.jp/news/2012/0919_3449.html
知的財産権の問題は生存権に直結する問題を含んでいると指摘。これを密室で取引するなど許せません。




