
※画像出典:読売新聞オンライン
■侮辱罪厳罰化、改正刑法成立 ネット中傷抑制に期待―「拘禁刑」創設、懲役・禁錮を一本化
https://www.jiji.com/jc/article?k=2022061300779&g=soc
時事ドットコム 2022年06月14日 07時03分
今回の改正で、懲役刑と禁錮刑を廃止し、「拘禁刑」として一本化。受刑者それぞれの事情に合わせて、作業と指導を行うことを可能にし、再犯防止につなげるのが狙いだ。刑の種類や名称の変更は1907年の現行刑法制定後、115年間で初めて。公布から3年後に施行される見通しだ。
■侮辱罪厳罰化、改正刑法が成立「拘禁刑」を創設
https://www.jiji.com/jc/article?k=2022061300085&g=soc
時事ドットコム 2022年06月13日 11時08分
侮辱罪に懲役刑を導入し、法定刑の上限を引き上げる改正刑法が13日の参院本会議で、自民、公明両党などの賛成多数で可決、成立した。深刻化するインターネット上の誹謗(ひぼう)中傷に歯止めをかけるのが狙いで、今夏にも施行する。
自公維国の稚拙な国会審議に疑問!
2022年06月13日(月)。インタ-ネット上の誹謗中傷対策を強化する為に「侮辱罪」に「懲役刑」を導入して法定刑の上限を引き上げる他、懲役刑と禁錮刑を一本化した「拘禁刑」を創設する改正刑法は参議院本会議で可決・成立しました。
自民党、公明党、日本維新の会、国民民主党などは賛成、立憲民主党、日本共産党、社民党、れいわ新選組などは反対しました。刑の種類や名称の変更は明治40年に現在の刑法を制定して以来で実に115年ぶりです。
刑罰の軸足を更生支援に!
身柄の拘束を伴う刑の内、刑務作業を義務付けている「懲役刑」と義務付けていない「禁錮刑」を廃止して「拘禁刑」に一本化しました。拘禁刑の目的は懲罰ではなく更生支援に刑罰の軸足を移す狙いです。
刑を規定した条文には「受刑者の改善更生を図る為に作業させ指導を行う」を明示しています。
法務省によれば、改正刑法の下で刑務所は受刑者の特性や刑期などに応じた処遇メニューを実施できます。例えば、改善更生の為に薬物・性犯罪の矯正プログラムを受ける時間を増やしたり現行制度では義務である「刑務作業」を無くすなど臨機応変に対応できます。
また、若年受刑者の学力向上や増加傾向にある高齢受刑者への福祉支援に繋がる指導に力を入れられます。施行は2025年の見通しです。
拘禁刑創設のメリットとデメリットは?
メリット。現行制度では身体や認知機能の衰えた高齢受刑者に刑務作業を軽減してリハビリを行ったり薬物依存者や性犯罪者の一部に改善プログラムなどを指導しています。拘禁刑に一本化したことで今後は作業義務に縛られず柔軟な処遇メニューを実施可能になります。
デメリット。薬物・性犯罪の矯正プログラムの中身に一抹の不安はあるものの現時点でデメリットは特にありません。懲罰ではなく更生支援に軸足を移した点は個人的に高く評価します。
被害者感情では高評価!
インタ-ネット上の誹謗中傷対策を強化する為に「公然と人を侮辱する行為」に適用される「侮辱罪」に「懲役刑」を導入します。
改正前の法定刑の上限は「拘留(30日未満)または科料(1万円未満)」で刑法上の扱いは軽いです。法改正で「1年以下の懲役もしくは禁錮」「30万円以下の罰金または拘留もしくは科料」に引き上げます。公訴時効は1年⇒3年に延長します。
事の発端は2020年5月に誹謗中傷を苦に自殺した女子プロレスラーの木村花氏(当時22歳)の事件です。同氏を誹謗中傷した大阪府と福井県の男性2人はそれぞれ侮辱罪で科料9000円の略式命令を受けました。軽過ぎる罰則に批判殺到、議論の契機になっています。
木村花氏の事件以降、誹謗中傷の厳罰化を求める声は多く表現/言論の規制は已む無しの空気になりました。母親の木村響子氏は厳罰化を求める署名活動を展開、法務省は侮辱罪に懲役刑を導入する方針を決めています。
侮辱罪の厳罰化を受けて記者会見を行った木村響子氏は「やっとという思いが強い」「誹謗中傷は犯罪だと多くの人に認識されることで更に細やかな法整備に繋がると期待している」とコメントしました。
その上で「SNSなどに感情のまま書き込めば傷付く人が出て刑事罰に問われる可能性がある」「書き込む前に手を止めて乱暴な表現になっていないか確認してもらいたい」と述べています。
東京・池袋暴走事故で妻と娘を亡くして交通事故防止の活動を行う中で誹謗中傷を受けた松永拓也氏、インターネット上に事実と異なる書き込みをされて脅迫を受けたタレントのスマイリーキクチ氏など過去被害を受けた人達は好意的なコメントをしました。更なる規制強化に期待を寄せています。
近日中に公布予定で20日経過後に施行されます。尚、国会審議の過程で厳罰化で表現の自由の制約を懸念する声に配慮して施行後3年を目途に有識者を交えた検証を行うことを附帯決議に明記しています。
侮辱罪厳罰化のメリットとデメリットは?
メリット。罰金額の引き上げや場合によっては懲役刑に処されるので被害感情では評価できる内容です。また、公訴時効を3年に延長したことで「情報開示請求」をして書き込んだ相手を特定した上で告訴する際に既に時効成立で刑事裁判手続きに入れなくなる事態を改善できます。
デメリット。名誉毀損罪は「公共の利害に関する場合の特例」を設けていて一般的に政治家や公務員などに対しては成立し難い傾向にあります。一方で、侮辱罪にこうした規定はなく「論評」を処罰し易い内容です。
本来は正当な権利である「政治批判」などに対して言論弾圧に使われるリスクは非常に高いです。濫用されないように運用を批判的に監視した上で更なる規制強化に対しては断固反対の声を上げなければ危険です。
日本共産党の小池晃書記局長は記者会見で「侮辱罪の厳罰化は言論の自由・政治活動の自由を脅かすものになりかねない」「言論に対する弾圧になりかねない非常に危険な内容なので問題点を指摘し反対した」とコメントしました。
日本弁護士連合会(日弁連)は今年3月に出した「侮辱罪の法定刑の引上げに関する意見書」で以下のように指摘しています。
1 侮辱罪について、法定刑を引き上げ、懲役刑を導入することは、正当な論評を萎縮させ、表現の自由を脅かすものとして不適切であり、また、インターネット上の誹謗中傷への対策として的確なものとは言えないので、これに反対する。
2 インターネット上の誹謗中傷による権利侵害への対策としては、プロバイダ責任制限法を改正して発信者情報開示の要件を緩和し、損害賠償額を適正化するなど、民事上の救済手段の一層の充実を図るべきである。
意見書の作成に携わった第二東京弁護士会の趙誠峰弁護士は「インターネット上の誹謗中傷を無くしていくことは必要だ」と述べた上で今回の法改正について「時の政府に少し侮辱的な表現を含んだ批判的な言動をすればある日突然逮捕状を示されるかもしれない」「非常に怖い世の中になるリスクを孕んでいる」と述べました。
その上で「今後、適正に運用されているか批判的な検証やチェックをしていく必要がある」「刑罰で問題を解決するのは最後の手段でありそれより手前の段階で民事上の解決が効果的にできるように損害賠償の金額を上げたり誹謗中傷した人の情報を被害者が開示しやすくするなどの対策も必要だ」と指摘しています。
スラップ訴訟の温床は確実に!
侮辱罪の性質上「金」「時間」「組織力」のある人は圧倒的に有利で間違いなく「スラップ訴訟」の温床になります。
AV新法を巡ってフリーライターの荒井禎雄氏を恫喝した伊藤和子弁護士、日刊ゲンダイのインタビュー記事による名誉棄損で「れいわ新選組」の大石あきこ氏と発行元の「日刊現代」を提訴した橋下徹氏、支持者への誹謗中傷を理由にタレントのマツコ・デラックス氏にスラップ訴訟を仕掛けたN国党(当時)の立花孝志氏など既に前例はあります。
これらはすべて法改正前の出来事です。右派も左派も相反する側の活動家やタレントに濫用されるリスクは覚悟しておくべきです。





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