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【表現規制】改正プロバイダ責任制限法施行!加害者の「情報開示請求」を簡便に!インターネット上の「誹謗中傷」の抑止力に期待大?規制強化のデメリットは?

表現規制ニュース
constitutionalism_2022_10_10
※画像出典:エキサイトニュース





■改正プロバイダ責任制限法施行 SNS中傷の発信者情報開示を簡便に
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2210/03/news130.html
ITmedia 2022年10月03日 16時58分 公開


ネット上で誹謗中傷された被害者が、加害者の情報開示請求を簡便に行えるようにする改正プロバイダ責任制限法が10月1日に施行された。開示請求にはこれまで2段階の裁判手続きが必要だったが、1回の手続き(非訟手続)で可能になる。

■ネットでの誹謗中傷投稿者を一発開示、改正法10月施行…被害経験者「手続き早まれば踏み出せる」
https://www.yomiuri.co.jp/national/20220928-OYT1T50158/
読売新聞オンライン 2022/09/28 15:30


インターネットに悪質な投稿をした人の身元の開示手続きを簡略化する「改正プロバイダー責任制限法」が10月1日に施行される。これまでは特定するまでに時間がかかり、迅速化が課題となっていた。かつて 誹謗ひぼう 中傷を受けた人からは、被害の救済や抑止効果を期待する声が上がる。(今泉遼、鈴木貴暁)

加害者の身元の開示手続きを簡略化!


2022年10月01日(土)。インターネットに悪質な投稿をした加害者の身元の開示手続きを簡略化する「改正プロバイダ責任制限法」は同日に施行されました。被害者救済を円滑にする為に「発信者情報開示」について新たな「裁判手続(非訟手続)」を創設しました。現行のプロバイダ責任制限法の課題と改正プロバイダ責任制限法のポイントを解説します。

プロバイダ責任制限法について!


プロバイダ責任制限法の正式名称は「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限および発信者情報の開示に関する法律」です。これはその名の通りでプロバイダ等の損害賠償責任の制限と発信者情報の開示請求について定めた法律です。

改正プロバイダ責任制限法のポイント!


改正プロバイダ責任制限法の主な変更点は以下の2点です。

  • (1)新たな裁判手続(非訟手続)を創設
  • (2)発信者情報の開示対象の拡大

(1)について、従来の法律では、コンテンツプロバイダに対して「IPアドレス等の開示を求める為の仮処分」の申し立てを行ってIPアドレスや経由プロバイダに関する情報の開示を受けます。次に、経由プロバイダに対して「発信者情報の開示を求める為の訴訟」を行います。

要するに、被害者は発信者情報の開示を求める為に「2段階」の裁判手続きを行わなければなりません。時間と費用の両面で負担は大きく被害者は泣き寝入りを余儀なくされます。

改正プロバイダ責任制限法では、従来の2段階の裁判手続きを行う方法と別に「ひとつの手続きで発信者情報の開示まで完了できる新しい制度」を創設しました。コンテンツプロバイダへの申し立てと経由プロバイダへの申し立てを併合、同一の手続きで審理します。

また、審理中に発信者情報を消去されることを防ぐ為の申し立ても併せて行えます。これによって、スムーズな発信者情報の開示を行って被害者の権利侵害情報を発信した者に対して「法的責任」を追及し易くなります。

(2)について、従来の法律では、開示対象の発信者情報に「ログイン時のIPアドレス等を含むか否か?」は明確ではなく裁判所の判断によっては開示請求を認められないケースもあります。

改正プロバイダ責任制限法では、一定の要件を満たした場合に「ログイン時のIPアドレス等」を開示対象にできます。これによって、近年社会問題化しているSNSを利用した権利侵害投稿に関して「投稿時のIPアドレス等を記録していない場合」でも「ログイン時のIPアドレス等」を開示されることで発信者を容易に特定可能になります。

トラブルは増加傾向!


インターネット上の誹謗中傷などに関する被害相談は増加しています。総務省の「違法・有害情報相談センター」に寄せられた相談は2021年度に「6329件」で10年前の4倍以上です。

内訳で最多は「名誉毀損」で2558件、次点は住所や電話番号などを晒す「プライバシー侵害」で2252件、相談者の内、発信者の特定方法を希望する人の割合は増えて2015年度は4%だったのに対して2021年度は「16%」になっています。

誹謗中傷に関する相談を受け付ける一般社団法人「セーファーインターネット協会(SIA)」では、誹謗中傷に該当すると判断した場合、ウェブサイトやSNS事業者に連絡、削除要請を行っています。同協会は昨年1年間に要請した1414件の内、74%にあたる1046件は削除されています。

被害者救済に一歩前進?


改正プロバイダ責任制限法の「新たな裁判手続き」「プロバイダ側の協力」に委ねられています。プロバイダ側の協力を得られそうなケースや開示要件を満たしているか否かを判断し易いケースでは活用できます。

一方で、プロバイダ側で争う姿勢を見せている場合は「従来の2段階の裁判手続きを行う方法」を選択せざるを得ません。この場合は被害者の負担は変わらず実効的に機能するか否かは未知数です。

しかし、弁護士等を通じて加害者の情報開示請求を受けた場合、発信者情報を特定困難なケースを除けばプロバイダ側に拒否されることは考えられません。被害者救済の意味では大きく前進です。

解説講演「2021年プロバイダ責任制限法改正について」!







改正プロバイダ責任制限法の深刻な副作用!


被害者救済の意味では大きく前進したものの発信者情報は「通信の秘密」で保障された権利です。改正プロバイダ責任制限法は憲法で保障された以下の部分に抵触しかねず副作用は非常に深刻です。

  • 通信の秘密(憲法21条)
  • 表現・言論の自由(同上)
  • 匿名表現の自由(同上)
  • 虚偽表示の自由(同上)
  • プライバシー権(憲法13条)

裁判所で個々の事案に応じて「被害者を救済を優先するべきか?」「発信者の通信の秘密や匿名表現の自由を尊重するべきか?」を判断します。発信者情報の開示を求める新たな裁判手続きは「裁判所の裁量」に大きく左右されます。

更に、今年7月7日(木)には「侮辱罪」を厳罰化する「改正刑法」を施行しました。拘留(30日未満)または科料(1万円未満)だった法定刑を「1年以下の懲役もしくは禁錮」「30万円以下の罰金または拘留もしくは科料」に引き上げられました。公訴時効は「3年」に延長されます。

背景にあるのは2020年にSNSの誹謗中傷を苦に自殺したプロレスラーの木村花氏(当時22歳)の事件、これを切っ掛けに見直し議論は拡大、一気に規制強化に進みました。一定の理解はできるものの非常に稚拙な法改正です。

改正プロバイダ責任制限法+改正刑法=現行最大レベルの表現規制!


匿名での「正当な批判」に対して訴訟を匂わせることで合法的にそれを封殺できます。法律の性質上「金」「時間」「組織力」のある人は圧倒的に有利で当ブログで再三指摘してきたように「スラップ訴訟」の温床になり得ます。

AV新法を巡ってフリーライターの荒井禎雄氏を恫喝した弁護士の伊藤和子氏、日刊ゲンダイのインタビュー記事を理由に名誉棄損で「れいわ新選組」の大石あきこ氏と発行元の「日刊現代」を提訴した橋下徹氏、浅草キッドの水道橋博士の投稿したツイートについて「法的手続きします」と投稿した日本維新の会の松井一郎氏、同ツイートを「リツイート(RT)した方も同様に対応します」とスラップ訴訟を匂わせたことで話題になりました。

古くは支持者への誹謗中傷を理由にタレントのマツコ・デラックス氏にスラップ訴訟を仕掛けたN国党(当時)の立花孝志氏など既に前例はあります。これらはすべて法改正前の出来事です。

改正プロバイダ責任制限法の附則第3条では、施行後5年を目途に見直し規定を設けています。また、同じく3年ごとの見直し規定を附則で設けている「個人情報保護法」と同様に定期的に改正して必要な措置を講じる見通しです。

改正プロバイダ責任制限法+改正刑法(侮辱罪厳罰化)は表現規制案としてはトップレベルの危険度です。イデオロギーに関係なく相反する側の活動家やタレントに濫用されるリスクは覚悟しなければなりません。今後の運用に要注視です。

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【要注視】改正刑法「参議院本会議」で可決・成立!現行刑法制定以来「115年」ぶりの大幅な見直し!拘禁刑創設で懲役刑と禁錮刑は廃止に!侮辱罪の厳罰化は過去最大級の言論封殺法?

政治・経済・時事問題
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※画像出典:読売新聞オンライン





■侮辱罪厳罰化、改正刑法成立 ネット中傷抑制に期待―「拘禁刑」創設、懲役・禁錮を一本化
https://www.jiji.com/jc/article?k=2022061300779&g=soc
時事ドットコム 2022年06月14日 07時03分


今回の改正で、懲役刑と禁錮刑を廃止し、「拘禁刑」として一本化。受刑者それぞれの事情に合わせて、作業と指導を行うことを可能にし、再犯防止につなげるのが狙いだ。刑の種類や名称の変更は1907年の現行刑法制定後、115年間で初めて。公布から3年後に施行される見通しだ。

■侮辱罪厳罰化、改正刑法が成立「拘禁刑」を創設
https://www.jiji.com/jc/article?k=2022061300085&g=soc
時事ドットコム 2022年06月13日 11時08分


侮辱罪に懲役刑を導入し、法定刑の上限を引き上げる改正刑法が13日の参院本会議で、自民、公明両党などの賛成多数で可決、成立した。深刻化するインターネット上の誹謗(ひぼう)中傷に歯止めをかけるのが狙いで、今夏にも施行する。

自公維国の稚拙な国会審議に疑問!


2022年06月13日(月)。インタ-ネット上の誹謗中傷対策を強化する為に「侮辱罪」「懲役刑」を導入して法定刑の上限を引き上げる他、懲役刑と禁錮刑を一本化した「拘禁刑」を創設する改正刑法は参議院本会議で可決・成立しました。

自民党、公明党、日本維新の会、国民民主党などは賛成、立憲民主党、日本共産党、社民党、れいわ新選組などは反対しました。刑の種類や名称の変更は明治40年に現在の刑法を制定して以来で実に115年ぶりです。

刑罰の軸足を更生支援に!


身柄の拘束を伴う刑の内、刑務作業を義務付けている「懲役刑」と義務付けていない「禁錮刑」を廃止して「拘禁刑」に一本化しました。拘禁刑の目的は懲罰ではなく更生支援に刑罰の軸足を移す狙いです。

刑を規定した条文には「受刑者の改善更生を図る為に作業させ指導を行う」を明示しています。

法務省によれば、改正刑法の下で刑務所は受刑者の特性や刑期などに応じた処遇メニューを実施できます。例えば、改善更生の為に薬物・性犯罪の矯正プログラムを受ける時間を増やしたり現行制度では義務である「刑務作業」を無くすなど臨機応変に対応できます。

また、若年受刑者の学力向上や増加傾向にある高齢受刑者への福祉支援に繋がる指導に力を入れられます。施行は2025年の見通しです。

拘禁刑創設のメリットとデメリットは?


メリット。現行制度では身体や認知機能の衰えた高齢受刑者に刑務作業を軽減してリハビリを行ったり薬物依存者や性犯罪者の一部に改善プログラムなどを指導しています。拘禁刑に一本化したことで今後は作業義務に縛られず柔軟な処遇メニューを実施可能になります。

デメリット。薬物・性犯罪の矯正プログラムの中身に一抹の不安はあるものの現時点でデメリットは特にありません。懲罰ではなく更生支援に軸足を移した点は個人的に高く評価します。

被害者感情では高評価!


インタ-ネット上の誹謗中傷対策を強化する為に「公然と人を侮辱する行為」に適用される「侮辱罪」「懲役刑」を導入します。

改正前の法定刑の上限は「拘留(30日未満)または科料(1万円未満)」で刑法上の扱いは軽いです。法改正で「1年以下の懲役もしくは禁錮」「30万円以下の罰金または拘留もしくは科料」に引き上げます。公訴時効は1年⇒3年に延長します。

事の発端は2020年5月に誹謗中傷を苦に自殺した女子プロレスラーの木村花氏(当時22歳)の事件です。同氏を誹謗中傷した大阪府と福井県の男性2人はそれぞれ侮辱罪で科料9000円の略式命令を受けました。軽過ぎる罰則に批判殺到、議論の契機になっています。

木村花氏の事件以降、誹謗中傷の厳罰化を求める声は多く表現/言論の規制は已む無しの空気になりました。母親の木村響子氏は厳罰化を求める署名活動を展開、法務省は侮辱罪に懲役刑を導入する方針を決めています。

侮辱罪の厳罰化を受けて記者会見を行った木村響子氏は「やっとという思いが強い」「誹謗中傷は犯罪だと多くの人に認識されることで更に細やかな法整備に繋がると期待している」とコメントしました。

その上で「SNSなどに感情のまま書き込めば傷付く人が出て刑事罰に問われる可能性がある」「書き込む前に手を止めて乱暴な表現になっていないか確認してもらいたい」と述べています。

東京・池袋暴走事故で妻と娘を亡くして交通事故防止の活動を行う中で誹謗中傷を受けた松永拓也氏、インターネット上に事実と異なる書き込みをされて脅迫を受けたタレントのスマイリーキクチ氏など過去被害を受けた人達は好意的なコメントをしました。更なる規制強化に期待を寄せています。

近日中に公布予定で20日経過後に施行されます。尚、国会審議の過程で厳罰化で表現の自由の制約を懸念する声に配慮して施行後3年を目途に有識者を交えた検証を行うことを附帯決議に明記しています。

侮辱罪厳罰化のメリットとデメリットは?


メリット。罰金額の引き上げや場合によっては懲役刑に処されるので被害感情では評価できる内容です。また、公訴時効を3年に延長したことで「情報開示請求」をして書き込んだ相手を特定した上で告訴する際に既に時効成立で刑事裁判手続きに入れなくなる事態を改善できます。

デメリット。名誉毀損罪は「公共の利害に関する場合の特例」を設けていて一般的に政治家や公務員などに対しては成立し難い傾向にあります。一方で、侮辱罪にこうした規定はなく「論評」を処罰し易い内容です。

本来は正当な権利である「政治批判」などに対して言論弾圧に使われるリスクは非常に高いです。濫用されないように運用を批判的に監視した上で更なる規制強化に対しては断固反対の声を上げなければ危険です。

日本共産党の小池晃書記局長は記者会見で「侮辱罪の厳罰化は言論の自由・政治活動の自由を脅かすものになりかねない」「言論に対する弾圧になりかねない非常に危険な内容なので問題点を指摘し反対した」とコメントしました。

日本弁護士連合会(日弁連)は今年3月に出した「侮辱罪の法定刑の引上げに関する意見書」で以下のように指摘しています。

1 侮辱罪について、法定刑を引き上げ、懲役刑を導入することは、正当な論評を萎縮させ、表現の自由を脅かすものとして不適切であり、また、インターネット上の誹謗中傷への対策として的確なものとは言えないので、これに反対する。

2 インターネット上の誹謗中傷による権利侵害への対策としては、プロバイダ責任制限法を改正して発信者情報開示の要件を緩和し、損害賠償額を適正化するなど、民事上の救済手段の一層の充実を図るべきである。

意見書の作成に携わった第二東京弁護士会の趙誠峰弁護士は「インターネット上の誹謗中傷を無くしていくことは必要だ」と述べた上で今回の法改正について「時の政府に少し侮辱的な表現を含んだ批判的な言動をすればある日突然逮捕状を示されるかもしれない」「非常に怖い世の中になるリスクを孕んでいる」と述べました。

その上で「今後、適正に運用されているか批判的な検証やチェックをしていく必要がある」「刑罰で問題を解決するのは最後の手段でありそれより手前の段階で民事上の解決が効果的にできるように損害賠償の金額を上げたり誹謗中傷した人の情報を被害者が開示しやすくするなどの対策も必要だ」と指摘しています。





スラップ訴訟の温床は確実に!


侮辱罪の性質上「金」「時間」「組織力」のある人は圧倒的に有利で間違いなく「スラップ訴訟」の温床になります。

AV新法を巡ってフリーライターの荒井禎雄氏を恫喝した伊藤和子弁護士、日刊ゲンダイのインタビュー記事による名誉棄損で「れいわ新選組」の大石あきこ氏と発行元の「日刊現代」を提訴した橋下徹氏、支持者への誹謗中傷を理由にタレントのマツコ・デラックス氏にスラップ訴訟を仕掛けたN国党(当時)の立花孝志氏など既に前例はあります。

これらはすべて法改正前の出来事です。右派も左派も相反する側の活動家やタレントに濫用されるリスクは覚悟しておくべきです。

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【危険】岸田政権「侮辱罪」に懲役刑導入を閣議決定!インターネット上の誹謗中傷対策強化!権力批判封殺の危険性?吉峯耕平弁護士「我々にとって重要な『表現の自由』が大きく損なわれてしまうのです」!懲役刑と禁錮刑一本化で「拘禁刑」を創設!再犯防止に向けた指導や教育プログラムを実施可能に!

表現規制ニュース
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※画像出典:バズプラスニュース





■ネット中傷抑止へ侮辱罪厳罰化 懲役・禁錮、「拘禁刑」に―刑法改正案を閣議決定
https://www.jiji.com/jc/article?k=2022030800396&g=pol
時事ドットコム 2022年03月08日 10時14分


政府は8日の閣議で、社会問題となっているインターネット上の誹謗(ひぼう)中傷を抑止するための「侮辱罪」厳罰化や、懲役刑と禁錮刑を一本化した「拘禁刑」の創設を盛り込んだ刑法など関連法の改正案を決定した。民事裁判の手続きを全面IT化する民事訴訟法改正案も併せて決定した。いずれも今国会中の成立を目指す。

拘禁刑創設は一定の評価!


2022年03月08日(火)。岸田政権は懲役刑と禁錮刑を一本化した「拘禁刑(こうきんけい)」を新たに創設、また「人を侮辱した行為」に適用される「侮辱罪」を厳罰化して「懲役刑」を導入する刑法の改正案を閣議決定しました。今国会で成立を目指す方針です。

刑務所への収容など身柄の拘束を伴う刑の内、刑務作業を義務付けている懲役刑と義務付けていない禁錮刑を一本化して「拘禁刑」を新たに創設します。拘禁刑では「受刑者の特性」に応じて刑務作業の他、再犯防止に向けた指導や教育プログラムなどを実施できるようになります。

また、裁判所の判断で個別の事案に応じた処分を出せるように「保護観察中」に再び罪を犯した場合に「執行猶予」を付ける事を可能にする他、被害者の心情を伝えて反省を促す制度を整備します。

再犯防止の為の指導や教育プログラムについて若干の不安はあります。只、思想を矯正するような内容でなければほぼデメリットはありません。刑の種類の見直しは明治40年(115年前)の刑法制定以来、初の事です。

侮辱罪厳罰化の危険性!


問題は「侮辱罪」の厳罰化です。これは、インターネット上の誹謗中傷対策の一環で、公然と人を侮辱した行為に適用される侮辱罪に懲役刑を導入、法定刑の上限を「1年以下の懲役又は禁錮」「30万円以下の罰金」に引き上げます。公訴時効は現在の1年⇒3年に延長します。

侮辱罪の性質上、定義を明確にするのは極めて難しくインターネット上で特定の個人を罵っただけで懲役刑の対象になり得ます。現時点で政治家や公的な情報についての扱いは決まっていません。弁護士の吉峯耕平氏はSmartFLASHの記事で以下のように指摘しています。

■SNSに「ブタ」と書いたら懲役刑…侮辱罪の厳罰化で「政治家の悪口も言えない」
https://smart-flash.jp/sociopolitics/175334
FLASH編集部 社会・政治 投稿日:2022.03.10 20:00

吉峯氏は、侮辱罪の厳罰化について2つの問題があるという。

「もともと侮辱罪の法定刑はきわめて軽い『拘留・科料』で、立ち小便や物乞い行為(軽犯罪法)と同じでした。これは、いわば、『準犯罪』といった位置づけでした。

ところが、改正案で1年以下の懲役刑と罰金刑が追加されました。同程度の法定刑として、痴漢や遺失物横領があります。暴行は懲役2年までだから、それよりは軽い。いわば、正式に犯罪の仲間入りをしたことになります。

そうすると、単なる悪口と侮辱をどう区別するかの基準が、今まで以上に大きな問題になります。はっきり言って、明確な基準を作ることはできません。

基本的には、よっぽどひどいものが侮辱として立件されますが、明確に何がOKと示すことは難しいし、恣意的な摘発もとても心配です。すると、悪口を言うと犯罪になるかもしれないとみんなが考えてしまう。これを『萎縮効果』といいます。

侮辱が本格的な犯罪になると、萎縮効果が強く働きます。本来は適法で、刑法が介入するべきではない言論まで萎縮してしまう。我々にとって重要な、『表現の自由』が大きく損なわれてしまうのです」

そしてもうひとつは、手続きの問題だという。いったいどういうことか。

「刑法など基本六法の改正は、法制審議会で時間をかけて審議されます。今回、『民事訴訟法のIT化』という別案件も閣議決定されました。これは、法制審議会を1年半ほど、23回も継続して開いて、慎重に議論して、ようやく案ができました。また、法制審議会の前に検討会と研究会を2回開催しています。基本法を変えるというのはそれくらい大変なことで、慎重な手続が必要です。

ところが、侮辱罪の法制審議会は、去年の9月と10月の2回しかやっていません。憲法の『表現の自由』を制限する非常に重要な問題ですから、単発の論点とはいえ、こんな簡単に刑法を変えてしまうのは恐ろしいことです。マスコミも含め、誰も何も言わないのが不思議です」

吉峯氏は、「悪口は基本的に罰しないことが重要」だと言う。

自身への批判を封殺する為に「権力者(政治家など)」に悪用される危険性は高くインターネット上では反対意見多数です。実上の表現/言論統制になるのは確実で導入後に社会的な大問題に発展しかねません。具体的に動き出す前に「例外規定」を設けるなどしなければ手遅れになります。

名誉棄損と侮辱罪の違いは?


名誉棄損罪(刑法230条)の構成要件は、

  1. 事実の摘示によって
  2. 公然と
  3. 人の社会的評価を低下させるおそれのある行為をした

なのに対して侮辱罪(刑法231条)の構成要件は、

  1. 事実を摘示しないで
  2. 公然と
  3. 人を侮辱した

一般的に「侮辱」の定義は「人の人格に対する軽蔑的な価値判断を表示」する事を指します。事実の摘示を求められる名誉毀損罪に対して「侮辱罪」は事実を摘示しなくても成立します。

同様に求められるのは「公然性」です。不特定または多数の面前で侮辱的な発言をすれば罪に問われます。いずれも「その行為によって相手の社会的評価を低下させる恐れのある場合」に成立します。

しかし、侮辱罪は「現実に社会的評価を低下させる事」までは求められません。要するに「真偽を確認できない抽象的な表現」「臆測の域を出ない単なる噂話」「意見」「感想」「愚痴」「悪口」などで成立するのです。

誹謗中傷を理由に批判を封殺した具体例!


誹謗中傷を理由に批判を封殺した(しようとした)ケースは既に起きています。水道橋博士を提訴した大阪市長の松井一郎氏はその典型例です。また、橋下徹氏のTV出演自粛を求めるWEB署名とそれを煽った立憲民主党の蓮舫氏も根っ子の部分は同じです。

しかし、本当に危険なのは権力者(政治家など)に悪用される事ではありません。政治的に相反する側のタレントや活動家などに悪用される事です。

侮辱罪の性質上「金」「時間」「組織力」のある人は圧倒的に有利なので「スラップ訴訟」の温床になります。れいわ新選組の大石あきこ氏を提訴した橋下徹氏、N国党(当時)支持者への誹謗中傷を理由にマツコ・デラックス氏を相手に集団訴訟を起した立花孝志氏などは良い例です。

侮辱罪厳罰化の背景!


侮辱罪厳罰化の背景にあるのは、2020年5月に誹謗中傷を苦に自殺した女子プロレスラーの木村花氏(当時22歳)の事件です。同氏を誹謗中傷した大阪府と福井県の男性2人はそれぞれ侮辱罪で「科料9000円」の略式命令を受けました。軽過ぎる罰則に批判殺到、議論の契機になっています。

木村花氏の事件以降、誹謗中傷の厳罰化を求める声は多く表現/言論の規制は已む無しの空気になりました。母親の木村響子氏は厳罰化を求める署名活動を展開、法務省は侮辱罪に懲役刑を導入する方針を決めています。





断固反対の声を!


刑法の改正はイコール人権の制限です。これに例外はありません。特に「感情」で後押しされた法改正は十中八九悪法になるのでまずは「断固反対」の声を上げるべきです。表現規制案としてはトップクラスの危険度です。特に反表現規制派は絶対に妥協NGです。

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【要警戒】インターネット上の「誹謗中傷」を厳罰化!法務省「侮辱罪」に「懲役刑」を導入方針!法制審議会部会の「要綱案」判明!例外規定なしで適用範囲に懸念!表現規制や言論弾圧の危険性は?

表現規制ニュース
constitutionalism_2021_10_13

インターネット上の「誹謗中傷」を巡る厳罰化の動きについて纏めました。法務省は刑法の「侮辱罪」「懲役刑」を導入する方向で要綱案を取り纏めました。近日中に法務相に答申する見通しです。一方で、SNS上の誹謗中傷に悩む女性4名は「オンライン・セーフティー・フォー・シスターズ」を創設しました。フェミニスト活動家の石川優実氏も参加するグループです。ある意味では法務省以上に要警戒です。





■侮辱罪厳罰化、懲役刑も ネット中傷に歯止め―法制審諮問へ
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021091400433&g=soc
時事ドットコム 2021年09月14日 18時56分


上川陽子法相は14日の閣議後の記者会見で、社会問題化しているインターネット上の誹謗(ひぼう)中傷行為に歯止めをかけるため、16日に開かれる法制審議会(法相の諮問機関)に刑法の侮辱罪厳罰化を諮問すると発表した。現行法で「拘留または科料」としている刑罰に懲役刑や禁錮刑、罰金刑を加える内容だ。

■ネット中傷、厳罰化を諮問へ 侮辱罪に懲役刑―上川法相
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021091400910&g=soc
時事ドットコム 2021年09月14日 18時18分


インターネット上の誹謗(ひぼう)中傷に対処するため、上川陽子法相は14日の記者会見で、刑法の侮辱罪を厳罰化する法改正を、16日の法制審議会(法相の諮問機関)に諮問すると明らかにした。新たに懲役刑などを導入することの是非を議論してもらう。

法務省「侮辱罪」に「懲役刑」導入の方針!


2021年08月30日(月)。インターネット上の「誹謗中傷」を巡る対策強化について、法務省は刑法の「侮辱罪」を厳罰化して「懲役刑」を導入する方針を固めました。インターネット上の投稿は加害者の特定に時間を要して摘発できないケースもあります。法改正によって抑止効果や泣き寝入りの防止に繋げる狙いです。

2021年09月14日(火)。前述の法務省の方針について、上川陽子法務相(当時)は法務相の諮問機関「法制審議会」の総会で諮問する事を表明しました。同氏は「インターネット上の中傷は社会問題化しており、こうした行為は、厳正に対処すべき犯罪であると示す必要がある」と述べました。

侮辱罪の現行の法定刑は「拘留(30日未満)」又は「科料(1万円未満)」です。法制審議会ではこれに「1年以下の懲役・禁錮」又は「30万円以下の罰金」を追加する是非を議論します。法定刑を引き上げれば「公訴時効」は現行の1年⇒3年に延長する事になります。

■「侮辱罪に懲役刑」厳罰化答申へ 法制審部会、ネット上の中傷対策
https://nordot.app/818378391054303232?c=768367547562557440
共同通信 2021/10/6 16:02(JST) 10/6 16:19(JST) updated


刑法の「侮辱罪」の厳罰化を検討する法制審議会(法相の諮問機関)の部会は6日、インターネット上の誹謗中傷対策を強化するため、法定刑に懲役刑を追加する法改正の要綱案を取りまとめた。現行の「拘留(30日未満)か科料(1万円未満)」に、「1年以下の懲役・禁錮または30万円以下の罰金」を加える。公訴時効も現行の1年から3年に延長となる。近く法相に答申する見通し。

具体的事例を示して人をおとしめる名誉毀損罪の「3年以下の懲役・禁錮か50万円以下の罰金」に対し、事例を示さない悪口である侮辱罪は罰則が軽い。ネットの普及による中傷の深刻化を想定していなかった。

悪口に「懲役刑」法制審議会の「要綱案」答申へ!


2021年10月06日(水)。インターネット上の「誹謗中傷」を巡る対策強化について、刑法の「侮辱罪」の厳罰化を検討していた法制審議会の部会は法定刑に「懲役刑」を追加する法改正の要綱案を取り纏めました。近日中に法務相に答申する見通しです。

法制審議会の部会の審議では「表現の自由」「言論の萎縮」を懸念する意見の他、身柄を拘束する罰則については不要とする意見もありました。これに対して、法務省は「処罰対象を変更する訳ではない」「科料も残るので一律に重く処罰される訳ではない」と説明しています。

法律の特性上、適用範囲を相当絞らなければ権力者や活動家など特定の勢力に悪用されるのはほぼ確実です。現時点で「名誉毀損罪」のような「例外規定」はありません。今後の検討会や国会審議で詰めの作業を行った上で、来年の「通常国会」に改正案を提出する見通しです。

■SNSの誹謗中傷に4人の女性が声を上げた 防止の法制化など目指すグループ結成
https://globe.asahi.com/article/14458635
朝日新聞GLOBE+ 2021.10.11


SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)での誹謗中傷に悩む女性ら4人が、被害を防止する法制度の実現などを目指す活動を始めることになった。国際ガールズデーの10月11日、東京の参議院議員会館で記者会見して発表した。

オンライン・セーフティー・フォー・シスターズに要警戒!


2021年10月11日(月)。SNS上の誹謗中傷に悩む女性4名は「Online Safety For Sisters(オンライン・セーフティー・フォー・シスターズ)」を創設、国際ガールズデーに合せて参議院議員会館で記者会見を行いました。被害を防止する法制度の実現などを目指して活動します。

現時点で具体的な活動内容は不明です。しかし、係っているのは#KuToo活動の発起人である石川優実氏や静岡県「来宮駅」でのトラブルで物議を醸した社民党常任幹事の伊是名夏子氏です。一部界隈では名の知れた「活動家」です。

特に「ジェンダー視点」を主張する活動家は、この件に限らず「憲法」「法治国家の原理原則」を超えて「思想ベースの独自ルール」を他者や社会に強制する傾向にあります。ある意味では法務省以上に危険な存在です。





厳罰化の背景と危険性!


一連の厳罰化の背景にあるのは、2020年5月に亡くなった女子プロレスラーの木村花氏(当時22歳)です。フジテレビの恋愛リアリティ番組に出演していた同氏はSNS上の誹謗中傷を苦に死去、投稿者の大阪府と福井県の男性2人はそれぞれ侮辱罪で「科料9000円」の略式命令を受けました。軽過ぎる罰則に批判殺到、議論の契機になっています。

具体的事例を示して人を貶める「名誉毀損罪」「3年以下の懲役・禁錮」又は「50万円以下の罰金」に対して、具体的事例を示さず悪口で人を攻撃する「侮辱罪」の罰則は軽いです。インターネットの普及による誹謗中傷の深刻化は想定しておらず刑法制定時の1907年以降大幅な見直しは行っていません。

誹謗中傷の厳罰化を求める声は多く表現/言論の規制は已む無しの空気になっています。木村花氏の母親、木村響子氏は厳罰化を求めて署名活動を展開、法務省は侮辱罪に懲役刑を導入する方針を決めました。被害の深刻さを鑑みれば一定の理解はできます。

しかし、政府・与野党やその支持者など「相反する勢力」に悪用されるのはほぼ確実で手放しで支持はできません。刑法の改正はイコール人権の制限です。特に「感情」で後押しされた法改正は十中八九悪法になるので今後の動向に要注意です。

右派も左派も正当な批判を誹謗中傷に摩り替えて封殺するケースは既に起きています。単なる「悪口」だけで適用される法律に「懲役刑」を導入するのに例外規定なしでは論外です。政治的な批判や論評まで摘発される危険性は非常に高く表現規制案としてはトップクラスの危険度です。

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【要注目】立憲民主党・小西洋之氏「名誉毀損」でプロバイダに対して「Dappi」の発信者情報開示請求!悪質なデマや印象操作を繰り返すTwitterアカウントの正体は?

表現規制ニュース
constitutionalism_2021_09_08

Twitterアカウント「Dappi(@dappi2019)」のツイート内容を巡って名誉毀損を理由にプロバイダに発信者情報開示請求を行った立憲民主党の小西洋之氏、東京地方裁判所はこの訴えを認めました。Dappiは意図的に切り取り編集した動画を用いて小西洋之氏を誹謗中傷。数多くの悪質なデマや印象操作で自民党礼賛立憲野党批判を繰り返してきたTwitterアカウントの正体に要注目です。

Dappi(@dappi2019)提訴までの経緯!





Twitterの反応!





ネトウヨ御用達のTwitterアカウントの正体は?


2021年09月03日(金)。立憲民主党の小西洋之氏は、ネトウヨ御用達のTwitterアカウント「Dappi(@dappi2019)」のツイート内容について名誉毀損を理由にプロバイダに対して発信者の情報開示を求める訴訟(発信者情報開示請求)を起こしました。東京地方裁判所は同日付でこの訴えを認めました。

事の発端は2020年6月の参議院予算委員会、黒川弘務検事長(当時)の法律上の懲戒処分権者を巡る小西洋之氏と安倍晋三首相の質疑応答です。Dappiは意図的に切り取り編集した動画を用いて小西洋之氏の質問を歪曲、同氏は「事実に基かない誹謗中傷」として法的措置を警告しています。

発信者情報開示請求は「プロバイダ責任制限法第4条」に基く情報開示請求です。 これは、インターネット上で他者を誹謗中傷するような表現を行った発信者の情報について「プロバイダ」に対して情報の開示を求める制度です。

Dappiは内調関係者?


2020年07月13日(月)。WADA@開示請求(特定の人)氏(@freeze209021)は「内閣情報調査室(内調)」に対してDappiに関する文書の有無の確認と開示を請求、内調は同日付で存否応答を拒否しました。

内調は「本件対象文章存否を明らかにした場合、内閣の情報機関である内閣情報調査室の情報関心等が推察されることとなり、それによって悪意を有する相手方が対抗妨害措置を講じるなど、糖質が行う業務の適正な遂行に重大な支障を及ぼすおそれがあり、ひいては我が国の安全が害されるおそれがある」と意味深な回答をしています。

組織運営はほぼ間違いなし?


Dappiの正体については「政党関係者」「内調」「電通」「新聞社」の関与も噂されています。完全シフト制でTwitterを更新、縮刷版なしの産経新聞の原紙や主要6紙の紙面画像、更に国会議員に提供された資料を即座にアップするなど明かに只の民間人の域を超えたTwitterアカウントです。組織運営はほぼ間違いありません。

Dappiは平常運転!


Dappiの特徴は安倍晋三前首相(一派)のシンパで菅政権は全力で擁護しています。一方で、同じ自民党の石破茂氏や野田聖子氏などに対しては批判的な傾向にあります。これまで数多くの悪質なデマや印象操作で自民党礼賛立憲野党批判を繰り返してきたTwitterアカウントです。

記憶に新しい所では、立憲民主党の福山哲郎氏や沖縄県知事選挙の際の玉城デニー氏など意図的に切り取り編集した動画やデマの被害に遭っています。

当事者のDappiは平常運転、何事もなかったようにツイートを更新しています。既に対策を講じているのかもしれません。小西洋之氏は「適切に法的措置を講じてまいります」と述べていて興味深い展開になっています。

誹謗中傷を巡る一抹の不安!


批判と誹謗中傷の境界は曖昧で安易な規制強化は誹謗中傷より大きな被害を齎します。基準の曖昧な法律は権力者や富裕層または特定の団体など「強者」に好都合で「政敵弾圧」に利用されます。

今回の件で言えば小西洋之氏の主張に間違いはありません。しかし、批判を誹謗中傷に摩り替えて封殺するケースは今後必ず起ります。Dappiに批判的な人達ほどこの点に鈍感なので憂慮しています。

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【要警戒】スラップ訴訟の口実に?プロバイダー責任制限法改正案「参議院本会議」で可決・成立!新たな「裁判手続」の創設で「投稿者」の「情報開示」を簡略化!

表現規制ニュース
constitutionalism_2021_04_25

インターネット上での匿名による誹謗中傷の被害を防ぐ為に投稿した人物を特定し易くする為の「プロバイダー責任制限法改正案」は参院本会議で全会一致で可決・成立しました。投稿者の情報開示を容易する「新たな裁判手続」を創設。施行は2022年秋頃の見通しです。一方で「スラップ訴訟」の口実になりかねず「批判の自由」「誹謗中傷」に摩り替えて封殺できる危険な内容です。

■投稿者特定、半年で ネット中傷対策、改正法成立
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021042101127&g=pol
時事ドットコム 2021年04月21日 18時46分


インターネット上での匿名による誹謗(ひぼう)中傷対策として、投稿者情報の開示を容易にする新たな手続きを盛り込んだ改正プロバイダー責任制限法が21日の参院本会議で、全会一致で可決、成立した。交流サイト(SNS)などに中傷を書き込んだ投稿者を特定するのにかかる期間を半年程度に短縮。損害賠償を請求する被害者らの救済につなげる狙いだ。2022年中に施行される見通し。

■ネット中傷、投稿者特定を迅速に 開示手続き改正法成立
https://www.asahi.com/articles/ASP4P4WQHP4NULFA02N.html
朝日新聞デジタル 杉山歩 2021年4月21日 15時08分


今回の改正は誹謗中傷を直接防ぐものではない。情報発信を抑える手段として開示請求が悪用される懸念もあり、「表現の自由」とのバランスをどうとるかが課題となる。成立した際の付帯決議には、事業者向けガイドラインの作成や、被害者支援制度の充実などが盛り込まれた。

総務省が委託運営するネット上の書き込みに関する窓口「違法・有害情報相談センター」への相談は、2019年度は5198件だ。15年度以降は5千件台で推移している。名誉毀損(きそん)や著作権の侵害、住所の公開などについての相談が多いという。(杉山歩)

施行は2022年秋頃!


2021年4月21日(水)。インターネット上での匿名による誹謗中傷の被害を防ぐ為に投稿した人物を特定し易くする為の「プロバイダー責任制限法改正案」は参院本会議で全会一致で可決・成立しました。誹謗や中傷を行った投稿者の情報開示を容易する「新たな裁判手続」を創設します。施行は2022年秋頃の見通しです。

附帯決議には「事業者向ガイドラインの作成」「被害者支援制度の充実」などを盛り込みました。プロバイダー責任制限法の改正を巡っては「表現の自由」を守る事を公約に掲げた自民党の山田太郎氏も係っています。一方で、同氏はあくまで立法府の一員に過ぎず「運用面」で懸念は残ります。

投稿者の特定容易に!


現行のプロバイダー責任制限法では、誹謗や中傷を書き込んだ投稿者のIPアドレスや個人情報を取得する為にはWebサイトの運営会社やインターネットサービスプロバイダ(ISP)を相手にそれぞれ仮処分申請や訴訟を起すなど主に「2回」の手続を行わなければなりません。

しかし、実際には権利侵害の「明確性」を理由に情報開示まで進めないケースは多く被害者の負担は非常に重いです。投稿者の特定までに掛る期間は平均で1年以上です。

改正プロバイダー責任制限法では、被害者の申し立てを基に「裁判所」の判断で運営会社やISPに対して開示を命令できます。手続は「1回」に簡略化されて期間は半年程度に短縮される見通しです。また、情報の開示を命じる前に投稿者の通信記録などを削除されないように予めISPに対して「情報の消去を禁じる事」を可能にします。

事の発端!


事の発端は、昨年5月に誹謗中傷を苦に自殺したスターダム所属の女子プロレスラー木村花氏、フジテレビ系列「COOLTV」で放送していた「テラスハウス」に出演した同氏は芸能活動や番組での言動を巡ってSNS上でバッシングを受けていました。

テラスハウスはシェアハウスでの生活を記録した「リアリティショー」です。所謂「ヒールキャラ」の木村花氏はSNS上で1日に100件近くの誹謗や中傷を受けていた模様。この事件を受けて「総務省」は有識者会議を設置、法改正に乗り出しています。

更なる規制強化の動き?


木村花氏の母の木村響子氏は「侮辱罪の厳罰化」を求めて署名活動を展開。これは心情的に理解できます。しかし、フェミニスト活動家など憲法や人権を独自に解釈する人達までこれに便乗していて極めて危険な流れになっています。

(1)投稿者の異議申し立て制度
(2)スラップ訴訟の防止
(3)表現の自由/言論の自由の保護(保障)

規制強化を議論する上で以上の3点は最低条件です。このままでは将来的に間違いなく「相反する意見」を誹謗中傷に摩り替えて封殺する「スラップ訴訟」は多発します。中立・公正・公平な第三者委員会の設置など少なくとも「投稿者の異議申し立て制度」は必須です。

所謂「言葉狩り」で得をするのは被害者ではありません。権力者、大企業、利権団体など豊富な資金力や組織力を持っている「支配層」若しくは「人権問題をクリエイトできる立場」の人達です。本当の意味での「弱者」「武器」を奪う事になりかねないので慎重に慎重を重ねて議論しなければなりません。

また「批判の自由」については気になる所です。これは「民主主義」を支える重要なファクターです。武蔵野美術大学教授の志田陽子氏は「『誹謗中傷』と『批判』の違いとは何か?」を美術批評の視点で論じています。一読をオススメします。

インターネット上の誹謗中傷を巡って厳罰化を求める声は多いです。右派/保守/愛国界隈は賛否両論。左派/リベラル/反差別界隈は賛成多数。木村花氏の事件に便乗して更なる法改正に進む事は容易に想像できます。現時点で警戒レベルは「3」相当です。世論に圧されて碌に議論をしないまま規制強化は十分にあり得ます。表現/言論の自由の観点で危険な状況にある事は留意するべきです。

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【要注意】#木村花さんを政府の国民監視に利用するな!インターネット上の「誹謗中傷」取り締まり強化に議論本格化!総務省「発信者」の「電話番号」を開示対象に!

表現規制ニュース
constitutionalism_2020_06_06

Twitterでの誹謗中傷を苦に命を絶った女子プロレスラーの木村花氏。この事件を端を発してインターネット上での匿名の「誹謗中傷」の規制に向けて具体的に動き出しました。総務省は被害者に開示できる情報に「電話番号」を加える方針を示した模様。法務省は対応策を検討するプロジェクトチーム(PT)を省内に設置。自公両党は新たな法規制や刑法の適用など罰則強化の検討を始めました。一方で「誹謗中傷」の定義を含めて恣意的な運用を懸念する声は多く上っています。

■SNS中傷対策、7月に前倒し 高市総務相「必要な法令改正を」発信者携帯開示も検討
https://mainichi.jp/articles/20200602/k00/00m/040/198000c
毎日新聞 2020年6月2日 20時14分(最終更新6月2日20時15分)


高市早苗総務相は2日の記者会見で、インターネット上での匿名の誹謗(ひぼう)中傷を巡り、総務省有識者会議が7月に対策を取りまとめると明らかにした。SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で批判された女子プロレス選手、木村花さん(22)が5月に死亡した問題を受け、当初予定した11月の取りまとめを前倒しする。発信者を特定しやすくするため、プロバイダー責任制限法の改正も検討する。

■SNSで名誉毀損、電話番号も開示 総務省年内にも実施
https://www.asahi.com/articles/ASN643TFXN64ULFA00B.html
朝日新聞デジタル 井上亮 2020年6月4日 19時18分


総務省は4日、SNSで名誉毀損(きそん)など権利侵害にあたる投稿があった場合に、SNS事業者などが被害者に開示できる情報に電話番号を加える方針を示した。早ければ年内にも関係省令を改正して実施する。発信者の特定に必要な裁判手続きが減り、特定までの時間が早まる見通しだ。

高市早苗総務相「7月に全体像示す」早ければ年内に実施?


2020年6月2日(火)。高市早苗総務相は記者会見で「悪質なネット投稿」の発信者を特定し易くするルールの見直しについて「7月の段階でできるだけ全体像の提言を頂き必要な法令改正に取り組む」と述べました。所謂「プロバイダー責任制限法」「開示ルール」を見直す方向で法整備を進める方針です。

また、森まさこ法務相は同日の記者会見でSNSで相次ぐ誹謗中傷対策を検討するプロジェクトチーム(PT)を法務省内に設置した事を発表しました。同氏は「相手方の特定に時間が掛かる」「適切な刑事罰のあり方を考えなければならない」と述べて法改正を示唆しています。

インターネット上の誹謗中傷は「名誉毀損」「侮辱罪」に該当し得るのの「公訴時効」「1年」と短く「発信者特定」の手続き中に時効を迎える可能性を問題視しました。更に「新型コロナウイルス感染症」に関連する誹謗中傷について「深刻な被害が社会問題化している」として早急な対策の必要性を示しています。

2020年6月4日(木)。インターネット上の人権侵害の被害拡大を受けて総務省は今年4月に有識者会議を設置しました。同日は「情報開示ルール」を定めた「プロバイダー責任制限法」の改善点をテーマに開催した模様。悪質なネット投稿の発信者の特定に必要な裁判手続きを減らして特定までの時間を早める見通しです。早ければ年内に関係省令を改正して実施します。

総務省の方針は一定の評価!


総務省はTwitterなどのSNSで利用者の本人確認の為に登録する「電話番号」を新たな開示対象に加える方針を示しました。現行法では「権利侵害」を認めた場合に開示されるのはインターネット上の住所に当たる「IPアドレス」などに留まります。発信者を特定するにはこのIPアドレスを基にISP事業者や携帯電話会社に情報開示を求める訴訟を起さなければなりません。

一般的にIPアドレスの保存期間は3カ月程度です。2度の裁判手続きは「時間」「費用」「手間」を要するので被害者の負担は重いです。電話番号を開示できれば被害者は弁護士を通じて携帯電話会社などに名前や住所など発信者の個人情報を照会できるようになります。

裁判の手続きは1度で済む上に、IPアドレスに比べて顧客情報として管理されている電話番号の保存期間は長く発信者を特定し易くなります。しかし「メールアドレス」で本人確認を行うなど利用者の電話番号を把握していないSNSは対象外です。

現行のプロバイダー責任制限法には事業者に対して発信者の名前や住所など個人の特定に繋がる情報を開示する義務はありません。開示請求に応じないケースは多いようです。これを踏まえて事業者側の責任のあり方も見直します。また「裁判を行わずに事業者の任意で情報開示し易くする制度改正」「海外事業者に適用させる方法」などを検討しています。

恣意的な運用防止に課題山積!


前述の有識者会議では総務省の方針に対して強い反対意見はありませんでした。一方で「表現の自由」「被害者救済」のバランスを危惧する声は根強く「事業者の独自判断で発信者の情報を開示し易くする要件緩和」については反対意見で大勢を占めています。

また「表現の自由の侵害」について高市早苗総務相は「あくまで刑法上の侮辱罪や名誉毀損に当たりうる権利侵害情報を投稿した場合」を前提にしている事を強調しています。

自公両党は新たな法規制や刑法の「侮辱罪」「名誉毀損罪」の適用など罰則強化の検討を始めました。インターネット上の誹謗中傷を巡って政府・与野党は様々は動きを見せています。被害者救済は大前提として「誹謗中傷」の定義を含めて恣意的な運用を懸念する声は非常に多く上っています。

政治家や企業への正当な批判まで潰す「言論封殺」「スラップ訴訟」など悪用を防止する仕組みは必要不可欠です。特に政府・与党は異常なスピード感で制度改正を進めています。常に動向に注意した上で問題あれば素早く意見して軌道修正しなければなりません。

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