
※画像出典:共同通信
広島市教育委員会は市立小中高校の「平和学習教材」を2023年度(令和5年度)に改訂、引用掲載していた漫画「はだしのゲン」を別の教材に差し替えることを決めました。時代背景の異なる現代で一部を掲載するだけでは「被爆の実相に迫りにくい」として削除に至ったようです。
■「はだしのゲン」平和教材から削除「被爆の実態に迫りにくい」広島市教委
https://www.chugoku-np.co.jp/articles/-/271259
中国新聞デジタル 2023/2/16
広島市教委は2023年度、市立の全小中学、高校の平和教育プログラムを初めて見直す。小学3年向けの新教材では、これまで採用していた漫画「はだしのゲン」を「漫画の一部を教材としているため、被爆の実態に迫りにくい」などとして削除。別の被爆者の体験を扱った内容に差し替える。
■「はだしのゲン」の掲載取りやめ 平和教育の教材、広島
https://nordot.app/999248250841333760
共同通信 2023/02/17
広島市立の小中高校が取り組む「平和教育プログラム」の教材から、漫画「はだしのゲン」の掲載がなくなることが17日、市教育委員会への取材で分かった。市教委がプログラム内容を検討する中で「漫画の場面だけでは被爆の実相に迫りにくい」と判断し、家族を失った被爆者の体験と継承の内容に2023年度から変更する。
広島市教育委員会「被爆の実相に迫りにくい」!
広島市教育委員会は市立小中高校の「平和教育プログラム」の教材を2023年度(令和5年度)に改訂、引用掲載してきた漫画「はだしのゲン」を別の教材(被爆者体験談など)に差し替えることを決めました。
はだしのゲンは原爆で家族を失った少年ゲンの姿を描いた作品で、作者・中沢啓治氏の被爆体験を元にした自伝的な内容です。英語、スペイン語、アラビア語、最近ではロシア語など24の言語に翻訳、原爆の恐ろしさを伝える世界的な名作です。
広島県では国語や道徳などの時間を使って「平和の担い手」を育成する教育を続けてきました。2013年度(平成25年)に統一教材「ひろしま平和ノート」を発行、各学年で年間3時間を授業に割いています。
松野博一官房長官は本件について「一般論としては地域の教育委員会や校長が決めるもの」と述べました。当たり障りのないコメントです。
見直しを理由は時代背景?
広島市教育委員会は差し替えの理由について「時代背景の異なる現代で一部を掲載するだけでは被爆の実相に迫りにくいと判断した」としています。
また、街角で浪曲の真似事をして小銭を稼ぐ場面や栄養不足で倒れた身重の母親に食べさせる為に池の鯉を盗む場面などに関して、子ども達に説明しなければならず「本質に近づく前の説明」を問題視しました。
同教育委員会の設置した大学教授や学校長による会議では、教材の改定を検討する中で「浪曲は現代の児童の生活実態に合わない」「鯉の盗みは誤解を与える恐れがある」などの指摘を受けたそうです。
高田尚志指導第1課長は「ゲンは市民に広く読まれており、市にとって大切な作品という認識は変わらない」と述べた上で「漫画の一部を切り取ったものでは、主人公が置かれた状況などを補助的に説明する必要が生じ、時間内に学ばせたい内容が伝わらないという声があった」と説明しています。
Twitterの反応!
原爆の残酷な場面を見て「怖い!」「気持ちが悪い!」「二度と見たくない!」と言って泣く子が日本中に増えてくれたら本当によい事だと私は願っている。「戦争」「原爆」という文字を見ただけで拒否反応を示す子が増えて、二度と私達のような体験をする世の中にしないでくれと願っている。(中沢啓治)
— はだしのゲン/中沢啓治bot (@genhiroshima) February 12, 2023
私の父は爆心地近くの被爆者です。被爆者の証言も大切ですが、差し替えて教材から消してしまうのは違和感があります。はだしのゲンがマンガだったからこそ訴求力を持ち、翻訳されて世界中で読まれてきた魅力があるのです。作者は被爆者であることも忘れてはいけない。残念ですhttps://t.co/h2dJ44UF5X
— 塩村あやか💙💛🐾参議院議員(りっけん) (@shiomura) February 16, 2023
「『はだしのゲン』平和教材から削除『被爆の実態に迫りにくい』広島市教委」岸田さんの選挙区もある広島でのことだ。防衛費倍増という大軍拡を推進する政権には不都合ゆえの忖度なのだろう。何しろ当時の軍部と現政権は同じようなものだからね。読むのがつらい『はだしのゲン』だから意味があるのだ。
— 立川談四楼 (@Dgoutokuji) February 17, 2023
「はだしのゲン」を様々な場所から抹消しようとする動きが広まっている。
— やす (@yasumuh) February 16, 2023
私は「はだしのゲン」で、戦争の恐ろしさ、そして汚さを知った。
戦争を始めたい大人たちは、子供に「戦争の恐ろしさと汚さ」を知ってほしくない。
だからこそ、「はだしのゲン」を目につかない場所に撤去しようとする
はだしのゲンのすげぇ所は、戦争の悲惨さを表にしながら、その実、日本人の本質を批判している所だぞ…ただの反戦漫画だと思っていたのか?これだから表面や見てくれでしか物事を判断しない愚かな日本人はwwwという表情 pic.twitter.com/cDjU875uhB
— かすてらP (@kasutera_tan) February 16, 2023
管理人後記!
差し替えに至るまでの経緯(会議の議事録など)を調べなければ背景についてはコメントできません。本件の争点はあくまで「教材」としての使用です。しかし、以下の2点を踏まえて個人的には「#はだしのゲンを無くすことに抗議します」に連帯します。
はだしのゲンは広島原爆の悲劇を描写した漫画として全国の教育現場で活用されています。一部を引用するだけでは被爆の実相に迫りにくいのであれば誤解されないように全面的に取り上げれば問題は解決できる筈です。
近年、右派を中心に同作を排除する動きは活発で、広島市教育委員会の判断はこの流れを受けての可能性は高いです。これは「戦争」を巡る歴史修正や隠蔽行為で国会では野党によって度々問題視されています。
また「表現規制」の観点で見れば大きな問題を孕んでいます。これは「フェミニズム」や「ポリティカル・コレクトネス」に基く「キャンセル・カルチャー」の行き着く先で「公共性を理由に特定の表現を排除することの『ハードル』を下げた結果」です。
更に、池の鯉を盗む場面に対して「誤解を与える恐れがある」と指摘している部分は典型的な「強力効果論(メディア効果論)」の発想です。直近では、大阪府吹田市で発生した事件にこじ付けて「エロ漫画は犯罪を助長する」と騒いでいた規制派と同じです。
取って付けたような理由で表現排除を正当化すれば「相反する立場の人達」や「公権力」に利用されるのは必然です。作品そのものを問題視している訳ではないものの表現規制的に見過ごせない案件なので今後の動向に要注目です。





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